「いじめ五輪」ダメ、ゼッタイ。開会式楽曲担当だった小山田氏 「いじめ自慢」で辞任

2021年7月20日 06時00分

19日、小山田氏がツイッターで公表した辞任申し出の文章

 東京五輪の開会式で楽曲制作を担うミュージシャン小山田圭吾氏の「いじめ自慢」問題。本人や掲載雑誌社が謝罪文を公表し、大会組織委も続投させる考えだったが、19日に辞任が公表された。武勇伝のごとく語られたいじめは、虐待や犯罪レベルだ。これまで謝罪しなかった小山田氏の意識も、起用した組織委の責任も看過できない。(中沢佳子)

◆海外でも関心「障害ある同級生を虐待」

 小山田氏が1994年と95年に発行された2つの雑誌のインタビューで語った「いじめ」は、かなり陰惨だ。同級生を段ボール箱に閉じ込める。服を脱がせて裸にする。排せつ物を食べさせる…。被害者は障害があったといい、いじめやすい人を狙う悪質さも感じる。それを、悪びれず笑い話のように披露したのだ。
 小山田氏の楽曲制作担当が公表された直後から、インターネット上には「ふさわしくない」などと批判があふれた。解任を求めるオンライン署名も始まり、賛同者から「私もいじめを受け、いまだに心に深い傷を負っている。血が逆流するほど憤りを覚える」「兄が知的障害者。障害者に虐待行為をした人物が参加するのは許せない」とコメントが寄せられている。
 海外メディアも問題視。英紙デーリー・テレグラフは「障害のある同級生を虐待した日本の作曲家は、開会式に関わり続けている」と咎めた。小山田氏は「多くの方々を大変不快な気持ちにさせ、誠に申し訳ない」などと謝罪文を公表し、被害者に直接謝りたいともつづったが、続投を表明。この謝罪文に小山田氏のバンドのメンバー・ゴンドウトモヒコ氏は「偉いよ小山田くん」「寧ろ炎上なんか○○喰らえ」とツイートし、削除に追い込まれた。

◆「大会楽しめない」「人生奪った自覚を」

 知的障害者の保護者らでつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」は「今回のことで、大会を楽しめない気持ちになった障害のある人や家族が、多数いることを強く指摘しておく」と声明。開幕間近のため解任までは求めないが、小山田氏起用の経緯や留任について組織委に説明を求めた。
 いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の理事で、娘をいじめ自殺で亡くした小森美登里さんは「彼の謝罪文は『ごめんなさい。でもこのままやらせて』という内容。自分の立場を守るためで、謝罪じゃない。『直接謝る』なんて、被害者の傷に塩を塗り込む行為だ」と憤る。いじめとは虐待そのものと考える小森さんは、「心に深い傷を負わせ、人生を奪った自覚が感じられない。彼を選んだ組織委の責任も重大だ」と話す。

◆世間と感覚ズレ「なぜ彼を起用」

 コラムニストの小田嶋隆さんは「90年代のサブカル系有名人は『自分はそこいらの優等生と違う』と尖った面をアピールし、何をしてもいいと思い上がった面がある。小山田氏もその1人。いじめ問題も起用前から何度も話題になったが、彼は無視した。そもそもこれはネット検索ですぐに出る情報。なぜ彼が起用されたのか」と、小山田氏の態度や組織委の問題意識の薄さを批判する。
 組織委の武藤敏郎事務総長は17日の会見で「十分に謝罪し、反省している。引き続き支え、貢献してもらいたい」と小山田氏を続投させる考えを示した。小田嶋さんは「謝罪を受け入れるかどうかは被害者の話。武藤氏が言うことじゃない」と切り捨てる。
 森喜朗・前会長の女性蔑視発言や、開閉会式の企画演出を統括する担当者の女性タレント侮辱発言で、物議を醸した組織委。小田嶋さんは世間の感覚とのズレにあきれる。「組織委は体育会系の同質集団。異質のものを排除する。小山田氏のような人物を選ぶセンスも、そんな集団だからこそ。五輪で掲げる多様性や差別禁止の理念とは遠い」

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