死別の悲しみ、抱え込まないで グリーフカフェで交流を 対話、アート体験…心軽く

2021年7月21日 07時17分

ハープの生演奏が流れる中で開かれた「グリーフカフェ」。参加者はボランティアと一緒にアート体験に取り組んだ=愛知県半田市で

 家族や友人など、大切な人との死別の悲しみ「グリーフ」を分かち合うカフェが広がりつつある。ボランティアが話を聞くだけでなく、苦しさを言葉にできない人も参加しやすいようにとアート体験を設けている例も。新型コロナウイルスの影響で人の交流が減り、思いをはき出せる場がなくなっている中、専門家はこうしたカフェの重要性が高まっていると指摘する。 (細川暁子)
 カラフルな色の画材を指にこすり付け、お地蔵様やアジサイなどの絵をはがきに描いていく。六月中旬に愛知県半田市で開かれたグリーフカフェ「さえずりの杜(もり)」。約二十年前に夫を亡くした女性(53)が、はがきに色付けするアート体験に取り組んでいた。子ども二人は既に独立し、今は一人暮らし。約一年前からこのカフェに通っているといい、「ここに来て無心で色を重ねる作業をすると心が落ち着く」と話す。
 さえずりの杜は、同市社会福祉協議会の助成を受けた同名のボランティア団体が約三年前から月一回二時間、市民交流センターで開いている。ボランティアらが参加者と一対一で家族や友人らと死別したつらさを聴くほか、パステルアートやランプ作りの体験も提供。毎回三人ほどが参加するという。
 同団体代表の加藤昌子さん(57)は「死別を経験した人が必ずしも悲しみやさみしさを言葉にできるとは限らない」と言う。アート体験を設けているのは、無理に話さなくても気兼ねなくカフェに来られるようにとの思いから。死別に限らずペットや家、仕事や地位など大切にしていたものをなくした人も迎えている。
 加藤さんは看護師。約三十年、主に精神科で働き、家族や友人らとの死別が原因で生きづらさを抱える多くの人たちと接してきた。訪問看護を担当していた患者が自殺し、無力感や喪失感にさいなまれたことも。「孤独の中にいる人が、たとえ気持ちを表現できなくても、来たことで『何かあるのかな』と察してもらえる場所をつくりたかった」とカフェへの思いを語る。
 参加者の一人、同県東浦町の音楽講師の榊原知里さん(58)は四月に母をがんで亡くした。初めてカフェに来たのは、その約一週間前。入院中だった母が「もうすぐ亡くなるかもしれない」という不安に襲われていた時だった。四年前に親友をがんで亡くしたこともあり、死への恐怖が増したが、「カフェで話を聞いてもらい、心が穏やかになった」。先月のカフェでは、他の参加者の前で得意のハープを奏でた。「私自身が癒やされてきた音色を、他の人にも聴いてもらえてうれしかった」とほほ笑む。

◆コロナ下「希望の場」増す必要性

 グリーフケアに詳しい東北大教授の谷山洋三さん(49)は「新型コロナウイルスの影響で葬儀が簡略化されたり、病院の面会制限で最期に立ち会えなかったり、亡くなった人との不本意な別れを強いられる人が増えた。会食もできず、悲しみをはき出せる場がなくなってきている」と指摘する。
 毎月1回など定期的に開かれるグリーフカフェがあれば、参加者に次回の予定、いわば生きる目標ができるため、孤立防止や自殺予防にもなり得る。「人は誰かと話すことによって自分の気持ちを整理したり、自身の存在意義を確認したりする。『ここに来れば必ず誰かがいて、つらさや苦しさに気づいてもらえる』という場所を多くの人が求めている」と話す。

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