原子力の目標比率、20~22%で据え置き 新エネルギー基本計画の素案 再生エネは36~38%に引き上げ

2021年7月21日 21時46分
 経済産業省は21日、新たな「エネルギー基本計画」の素案を示した。温暖化ガスの排出量を2030年度に、13年度比で46%削減するとの国際公約を踏まえ、再生可能エネルギーの30年度の発電比率目標を36~38%と現在の実績のおよそ倍にした。原子力は現行目標の20~22%を維持し、あわせて6割を脱炭素電源で賄う計画だ。(皆川剛)
 一方、石炭、液化天然ガス(LNG)、石油など主力の火力を現在の実績の75%から41%まで大幅に減らす。わずか9年で電源構成を劇的に変える。再エネのうち、水力と風力、地熱は急速な拡大が難しいため、実現の可否は太陽光の普及次第となる。

◆目標達成には原発の運転期間延長が必要だが、記載はなし

 原子力については、温暖化ガスを排出しない「重要なベースロード電源」とした。現在5%程度の発電比率から今回維持された目標まで引き上げるには、原発の運転期間延長が必要だが、経産省はその点に触れず「原子力規制委員会の判断を尊重し再稼働を進める」と記載した。
 示された目標は、達成可能な数字を積み上げたものではない。温暖化ガス排出量の大幅削減を掲げる国際社会の動向に倣う形で、菅義偉首相が今年4月に表明した「30年度に13年度比で46%削減」に合わせて短期間に作られた。今後は国民や企業を巻き込み実効性のある政策を進められるかが問われる。
 素案は8月前半をめどに決定し、パブリックコメント(意見公募)を経た後、閣議決定される。

◆再生エネ普及が進まないと、原子力の比率引き上げも

 素案は、再生可能エネルギーの増加や火力の減少を明確に打ち出す一方、原子力を巡っては曖昧な記述に終始した。2030年度の温暖化ガス排出量の目標は国際的に譲れないため、再エネの普及が計画通りに進まなければ、もうひとつの脱炭素電源である原子力の比率引き上げが視野に入る。
 30年度の目標を達成するには、革新技術の登場が見込めない中、再エネと原子力を足して6割に積み上げるしか手がない。当面の再エネの主役は、固定価格買い取り制度の導入や発電用パネルの低価格化で、国土面積あたりの設置容量が世界一となった太陽光だ。

◆土砂災害の危険などで「太陽光」は設置規制が増加

 だが、さらなる普及には難題もある。適地が減っていることに加え、開発による土砂災害の危険性や環境破壊を理由に、太陽光発電設備の設置を規制する自治体が増えている。
 再エネ普及のため、政府は農地の転用をしやすくしたり、建物の壁に貼れる軽量の太陽電池の開発を促したりする。さらに、再エネが石炭火力に優先して送配電網を利用できるようルールを見直すことなども盛り込んだが、これまでも議論されている内容で、実現は不透明だ。
 原子力については「可能な限り依存度を低減する」と強調しつつ「必要な規模を持続的に活用していく」とも記述。明確な方向性を示さなかった。
 政府が民間を巻き込み、実効性のある政策を進められなければ、再エネ「36~38%」の青写真が崩れ、原子力引き上げが取り沙汰される可能性もある。
 そもそも、現行の原子力目標「20~22%」は、現在までに再稼働や稼働申請をした27基の原子力発電所を全て動かすことが前提だ。「原則40年運転で一度だけ60年まで延長できる」とする法の延長規定の適用も複数の原発で必要だが、素案はこうした点を取り上げなかった。
 福島第一原発事故では、いまだ2万2000人の避難者がおり、多くの国民が原発へ不安感を抱く。支持率が低迷する菅義偉内閣には、総選挙を前に原子力という対立の深い論点を扱う余力はなく、議論を先送りした格好だ。素案を示した専門家会議で、委員の1人は「原子力についてそろそろ方向性を示さないと、(政府の計画に)誰もついてこない」と指摘した。

 エネルギー基本計画 電力や資源について政府の中長期的な方針を示す。将来の電力需要を見積もり、再生可能エネルギーや火力、原子力などの発電比率目標を示す。比重の大きい電源の普及に有利なように国の補助金や規制、税制が定められ、民間の投資先も大きく左右する。今回の計画は、10月31日に始まる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に提示する。

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