ワクチンめぐる「裏切り」の渦 単位引き換えの学生五輪ボラに「未接種でも参加を」 国の突然「配れない」に知事激怒

2021年7月22日 06時00分

◆「国のガバナンス失われている」

 いらだちをあらわにするのは、ワクチンの供給不足に悩まされる自治体もだ。
 20日に会見した埼玉県の大野元裕知事は「国から急きょ、7月26日の週と8月2日の週のワクチンが配送されないと理由もなく一方的に通知された」と暴露し、「国のガバナンスが失われているということ。ひどいやり方にはあきれて言葉もない」と怒った。
 従来の計画では、高齢者接種を行ってきた県浦和合同庁舎で8月2日以降、エッセンシャルワーカーを対象に1日1000人程度を接種する予定だったが、8月16日ごろにずれ込むことになった。今月から8月上旬にかけて新設予定だった3会場も開設時期が後ろ倒しされる。これらもエッセンシャルワーカー向けという。
 県の担当者は「供給不足に陥ったのは、政府が職域接種を積極的に促したからではないのか。優先順位を考えると、それでよかったのか。接種した方がいい人が接種できないのは本末転倒だ」と話す。
 他の自治体も似た問題に直面する。共同通信が都道府県庁所在地の47市区(東京都は新宿区)にアンケートした結果、ワクチン供給の減少を受け、予約枠縮小や予約停止など接種計画を「見直した」「見直す予定」と回答したのは79%の37市区に上った。

◆河野氏、批判にブログで「逆ギレ」

河野太郎行政改革担当相

 しかし、ワクチンを所管してきた河野太郎行政改革担当相がきちんと反省しているようには見えない。自らのブログでは「逆ギレ」の投稿までしている。
 事の発端は今月6日の会見だ。モデルナ社製ワクチンについて当初、4000万回分の供給を契約した一方、実際に調達できたのは1370万回分と明かし、そうした話がモデルナ社から出たのは「ゴールデンウイーク前ぐらい」と述べた。
 これに対し、東京工業大の中島岳志教授(近代日本思想史)はツイッターで「4000万回分あるかのように振る舞い、ワクチン接種現場の競争を煽った」「(供給不足で)予約をうまくとることができない人たちの不満や怒りは、主に自治体の窓口にぶつけられた」と投稿。6日の会見で明かされた大幅な調達減にも触れ、「これによって何が棄損されているのか。それは政府に対する国民の信頼である」と書き込んだ。
 これに河野氏が色をなして反発。12日のブログでは、欧州連合(EU)との交渉でファイザー社製を確実に確保するためにモデルナ社製の供給は後ろ倒しにしたこと、モデルナの同意なくして供給状況を公表できないことを強調し、「何が悪いのか」と言わんばかりに正当化。そして、「お酒の量を減らすことをおすすめします」と皮肉をぶつけた。

◆「国は現場の声に耳を傾けよ」

 政府が裏切りや居直りを重ねる影響は大きい。
 国立感染症研究所の元研究員で内科医の原田文植氏は「感染症対策のカギはワクチン接種を通じた集団免疫の獲得であり、それは国民や自治体の協力なくして進まない。しかし今の政治家や官僚の振る舞いには、不信ばかりが募っている。彼らがワクチン接種の旗を振っても、若者を中心に従わない人が出てくるだろうし、接種現場を担う人たちは混乱に振り回されて疲弊し、作業に支障を来す可能性がある」とみる。
 その上で「確実に接種を広げるために重要なのは現場の声に耳を傾けること。困っていること、求めていることに向き合い、改善に努めるべきだ。国民や自治体の信頼を取り戻すには、そうするしかない。もう1つは最新の科学的知見を取り入れること。ファイザーとモデルナを交互に打っても構わないという論文も出ている。そうした知見を借りれば柔軟に対応できるようになるはずだ」と語る。

◆デスクメモ どうみても失策ではないか…

 日本の2回目ワクチン接種率は21日現在23.1%。うち7割は高齢者だから、いわゆる現役世代の接種率はさらに下がる。一方、急速に広がるデルタ株は、現役世代でも重症化しやすいという。今こそ現役世代への接種が必要なのに、ペースダウン。どうみても失策ではないか。(歩)
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