<お父さんへ 父と娘の14000通>(2)カタカナに四苦八苦

2021年7月22日 08時02分
 前回、五十九歳にして初めてパソコンを買った父に、メールを送ることになった経緯を書いた。以来二十年、毎朝メールが来るのだが、最初のころは、そして今もたまに父のメールに「?」となることがある。
 主に外来語。文章を書く習慣がなかった父は、耳から入った外来語(しかも関西弁)をそのまま表記する。バリウムはバリューム、メニューはメニュウ、パフォーマンスはパホーマンスといった具合に。
 政治の話で「安倍チュルドレン」と書いてきた時は、私の頭の中にはチュルチュルのうどんしか浮かばなかった。
 先日、腰痛で病院に行った父。「アスレチックで筋肉を鍛える必要がある」。高齢者にそんな過激な運動を勧める医者がいるのか、と驚いたが、「ストレッチ」のことだった。
 でも父なりに書くことで、これまでうろ覚えだった言葉を調べ直したり、語感が悪くならないように「を」「も」「が」など助詞選びを熟考したりしていたようだ。
 最近の傑作。文春砲など週刊誌発のスクープについて書いてきたメールに、こんなフレーズがあった。
 「週刊誌のガスネタ」。ガセネタの書き間違いだろうな。でも待てよ。「カス」のようなどうでもいい話とガセネタの造語なら、これはこれで言い得て妙だ。そう返した翌日の返事。「単なる書き違いです」。そして、こう続く。「老齢のなせるわざです。大いに笑ってください」 (宮崎美紀子)
      ◇
 父、79歳、兵庫県在住。娘、52歳、神奈川県在住。ひょんなことから、二十年間毎日、互いに七千通超のメールを送り続けた父と娘のコミュニケーション術。

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