「無観客、納得できない」サッカー南ア戦会場周辺のファン、試合開始に閉店するスポーツバーも

2021年7月22日 21時44分

東京スタジアムのメインゲート近くでスマホでテレビ中継を見る親子。「家とは臨場感が違う」と愛犬を連れて訪れた=東京都調布市で

 サッカー男子・日本の初戦、南アフリカ戦が開催された味の素スタジアム(東京都調布市)の周辺には22日、無観客試合にもかかわらずサッカーファンの姿が見られた。午後8時からの日本戦開始後も30人程度が残り、会場から聞こえるホイッスルの音を聞きながら、スマートフォンの動画中継で試合の行方を見守るなどした。
 近くに住む会社員藤田敏弘さん(49)は息子(15)とスタジアムを訪れ、スマホの動画中継で観戦。「家ではここのようにホイッスルは聞こえませんし。臨場感が違いますね」。藤田さんは東京スタジアムも会場の一つだった2年前のラグビーワールドカップ(W杯)を引き合いに「あの時は調布も大いに盛り上がった。酒場で海外の人とも一緒に楽しめた。期待していただけに無観客は悔しい」としみじみと語った。
 家族連れでスタジアム周辺の様子を見に来た調布市の心理カウンセラー(49)は「選手には試合ができること自体に感謝して、戦ってほしい。うちの子は通っているプールが緊急事態宣言で休止している。多くの人々が犠牲を払っているのを認識してほしい」と話す。
 東京スタジアム周辺には1964年の東京五輪のマラソンコースの折り返し地点がある。近くで酒店を営む萩原治さん(65)は「マラソンの円谷幸吉選手らの力走を間近で見た」と懐かしむ。「『あの時の熱気よ、再び』と期待したが、コロナがすべてを奪い去った」と人通りの少ない通りの様子を嘆いた。

◆渋谷のスポーツバー閑散、店主「目も当てられない状況」

 サッカーの国際大会があるたびに大勢のファンがつめかけ、歓喜にわく東京・渋谷。この地で21年間、営業を続けてきた老舗スポーツバーFieldsでは、この日、東京都の要請通り、酒類を提供せずに営業を開始した。
 

閑散とした店内のスポーツバー「Fields」=東京都渋谷区で


 従来であれば、国際試合の日には200人超の客がつめかけ、店内は熱狂に包まれる。だが、この日はランチ後に訪れた客は2人だけで午後6時40分には客はいなくなった。問い合わせの電話は数十件あったが、営業時間が午後8時までと伝えると、予約にはいたらない。100分の1の客足に店主の田中守さん(67)は「目も当てられない状況。つらいです」と頭を抱えた。
 これまでも要請に従ってきた田中さん。コロナ前に比べ、売り上げは6割も減り、老後の貯金を切り崩し、なんとか店を維持してきた。「要請はさまざまな専門家が真剣に考えた対策。それに従わずに感染者が広がれば、コロナは人災になる」とし、「酒も出せず、五輪特需は期待できない」と声を落とした。
 店内のテレビでは日本戦に向けた特番が放送され始めても客はゼロのまま。日本戦のキックオフの午後8時、田中さんは静かに店の明かりを消した。

◆神奈川県内のスポーツバーは営業

「コロナが大変な中で五輪を開いて良いのかとも思ったが、ここまできたら楽しみたい」と神奈川県内のバーを友人と2人で訪れた男子大学生(21)。店内のスクリーンに日本の先制シーンが写し出されると、思わずガッツポーズ。十数人の客から「ヨッシャー」という声が店内に響いた。
 県内は二十二日からほぼ全域で酒類の提供停止が要請された。だが、この店は協力金の少なさから要請に従わずに営業している。だが、積極的に宣伝することもできず日本戦でも空席が目立つ。店代表の男性(44)は「本来は立ち見が出る時もあるのだが」と淡々と話す。
 午後九時五十分ごろに日本が勝利を決めた後も、営業は続き、客たちは試合を振り返りながら、グラスを傾けた。
(花井勝規、西川正志、米田怜央) 

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