逆風の中で迎える大舞台…選手は鍛錬してきた成果を発揮することだけに専念すべき<担当記者の視点>

2021年7月23日 06時00分
女子100メートル自由形で2位となり、引き揚げる池江璃花子=2021年6月5日、千葉県国際総合水泳場で

女子100メートル自由形で2位となり、引き揚げる池江璃花子=2021年6月5日、千葉県国際総合水泳場で

 「開催自体の意義が問われる中、常に自分たちに何ができるのか、スポーツの意義について考えてきました。スポーツの力を信じ、チームジャパンの一員として全力で戦い抜くことを誓います」。6日の日本選手団の結団式。主将の山県亮太の決意表明は、さわやかだった。
 対照的に、聞くたびに背中がぞわっとするのが、菅義偉首相や国際オリンピック委員会(IOC)幹部らの五輪を巡る発言だ。直近だけでも「スポーツの力を世界に」「希望と勇気を世界中にお届けできる」。こんな具合に、五輪の開催意義を強調してきた。
 スポーツには確かに偉大な力がある。五輪の舞台に挑むトップアスリートも、かつて誰かの雄姿を目に焼き付け、追い続けてきたから今がある。一般の人も、たとえば選手に自らを重ね合わせるなどし、日々の活力にするだろう。
 ただ、希望や勇気を届けられるのは、あくまでアスリート本人だ。主催者側の偉い人たちが、勇気や感動をつくり出すわけではない。
 こうした発言が、アスリートへの圧力、敵視につながらなければいいのにと願う。競泳、池江璃花子(ルネサンス)のSNSへの五輪中止を求める書き込みは大きなニュースになった。個人的に親しくしている他競技の五輪メダリストも、同種の手紙が名指しで競技団体に送り付けられた。ただでさえ逆風の中で五輪を迎える。本来なら、これまで鍛錬してきた成果を発揮することだけに専念すべき舞台。五輪の開催意義や成否までも担わされるとすれば、アスリートがかわいそうすぎる。 (多園尚樹=レスリング、ソフトボール、フェンシング担当)
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 東京五輪が23日夜、開幕する。コロナ禍で異例ずくめの大会。これまで選手を取材してきた運動部の記者が、今の思いや大会報道への意気込みをつづった。

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