<寄席演芸の人びと 渡辺寧久>はやる曲 常に関心 お囃子・太田そのさん

2021年7月23日 07時21分

所有する三味線は7丁。「糸は絹。三の糸は切れぬようナイロン製です」と話す太田そのさん

 シンガー・ソングライター米津玄師(よねづけんし)の最新曲で、落語をモチーフにした「死神(しにがみ)」。つい最近、三味線のレパートリーに加えた。
 落語協会(柳亭市馬会長)に所属するお囃子(はやし)、太田そのさん(46)は「米津さんの曲は、紙切りのリクエストで『死神』が出たときのための準備です。少し前は『鬼滅の刃(やいば)』のテーマ曲やクイーンの『ボヘミアン・ラプソディ』を結構弾きましたね」と常に世情や流行に関心を寄せる。「ただ三味線を主張しすぎてもいけないので、音の大きさには気を使います」と控えめだ。
 寄席や落語会を三味線で支えるお囃子という仕事。メインの仕事は芸人が登場する際の出囃子を弾くこと。落語家の場合なら、座布団に座り頭を下げたタイミングできれいに鳴りやむ。その瞬間、客席と高座が心地よい緊張感で結ばれる。それが寄席囃子の効果だ。客前に顔を出すことはない裏方だが、寄席には不可欠な存在である。
 東京・下町の生まれ育ち。六歳から日本舞踊のけいこに通い、師匠の勧めで高校時代に三味線を習い始めた。
 通常、寄席囃子の演奏家になるには、日本芸術文化振興会の研修を経るコースが一般的だが、そのさんは異色。東京芸術大学音楽学部邦楽科で清元を専攻し、早稲田大学の落語研究会にも所属していた。芸大に落研がなかったからだ。
 「落語が好きで、どうしてもお囃子になりたかった。当時は研修生を募集していなくて、(柳家)小三治師匠のところに飛び込んで、一門にさせていただきました」というあこがれの世界で四半世紀。台風が来ようが雪が降ろうが毎日、着物姿で家を出て、都内の寄席に通う。同一寄席に何人かが配置されるため、休みはその中で調整して取得するという。
 「仕事の喜びは落語が聞けること。はめもの(落語の中で三味線を効果音、効果音楽として使うこと)で、師匠にご満足いただけたときは本当によかった、と思いますね」 (演芸評論家) 

「文化譜」と呼ぶ三味線の譜面


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