コロナ感染拡大、無観客、国民の多くが反対…異例ずくめの五輪開幕 市民団体、医療従事者、被災地の人らの思いは

2021年7月24日 06時00分
 新型コロナウイルスの感染拡大を抑えられず、一部を除いて無観客、国民の多くが開催に反対という異例ずくめの東京五輪が23日、開幕した。昨年3月に1年間の延期を決めた際に当時の安倍晋三首相が発した「コロナに打ち勝った証し」には到底ならず、さまざまな課題も山積したまま。各方面の人たちの反対の声に、いま一度耳を傾けた。(木原育子、古川雅和)

◆「市民が目撃した五輪を記録する」

 「この時代に生きている市民が目撃した東京五輪を、将来に向けて記録しておくべきだと思った。あの時、何を見ていたのかと振り返る際のアーカイブ(記録保管所)の一面もある」。東日本大震災の被災地の取材と発信を続けているインターネット放送局「OurPlanet(アワープラネット)―TV」代表の白石はじめさん(51)が語る。

五輪地図プロジェクトの画面

 白石さんは9日、「市民が撮った五輪地図プロジェクト」を開始した。ツイッターで「#Tokyo2020map」に写真や動画を投稿すると、撮影月日、場所と共にネット上の地図に落とし込まれて印が付く。それをクリックすれば、誰でも簡単に見られる仕組みだ。パラリンピック閉会日の9月5日まで募集する。
 白石さんは「スポーツの枠を超え、ビジネスの側面ばかり強くなっている。復興五輪という趣旨からもかけ離れている」との考えから、開催に反対の立場。その半面、どんな意見も残しておきたいとし、賛否問わず投稿を募っている。
 中には、宅配便のトラックの車体に書かれた「しあい前、耳をすますときこえます、応援するみんなの声が!」という小学生の応援メッセージや、幻となった福島観戦ツアーのポスターの写真なども並ぶ。ただ、聖火リレーの反対デモで参加者と警察官がもみ合う場面、五輪中止を訴える展示会「オリンピック終息宣言緊急展」の写真など、やはり批判的な投稿が多い。
 開幕前日まで大会組織委員会関係者の解任劇があった前代未聞の五輪。白石さんは「山登りに例えれば、休憩とか下山を言い出せるリーダーがいない。そうした国であることを世界に発信した。市民は競技会場には入れなくても、日常生活に入り込んできた五輪は撮影できる。外側からだからこそ見えてくる何かがある」と強調した。

◆「『やめるのは簡単』ならやめてもらいたい」

 今月2日からは元外交官の飯村豊さんらが中心になり、学者や作家ら14人が「五輪開催は歴史的暴挙」として中止を求めるオンライン署名を実施。賛同者の一人で哲学者の内田たつるさんは「(開催地が未定だった)2032年や、24年のパリとの共同開催を探るなどやり方はいくらでもあった」と振り返りつつ、「パンデミック(世界的大流行)から脱していないのだから、開会式後でもやめるのが常識的だ」と主張する。
 19日に東京都などに14万筆弱の署名を提出した後も勢いは止まらず、間もなく15万筆に達する。内田さんは言う。「市民は家から出るなと言われ、命の危険にさらされ続けたまま。菅義偉首相は米紙インタビューで『五輪をやめるのは一番簡単』と語ったが、そんなに簡単ならすぐにやめてもらいたい」
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