コロナ感染拡大、無観客、国民の多くが反対…異例ずくめの五輪開幕 市民団体、医療従事者、被災地の人らの思いは

2021年7月24日 06時00分

◆「五輪で国民の二極化がよりあらわに」

 コロナ禍の東京五輪は、世界各国で好意的には捉えられていない。調査会社イプソス(パリ)が5月21日~6月4日に世界28カ国計約2万人に実施し、今月13日に結果を発表した国際世論調査で、全体の57%が開催に反対と答えた。国別では韓国の86%を筆頭に、日本(78%)、中国(59%)、米国(48%)などだった。また、五輪が「国を団結させる」と考える人は、日本が28カ国中最低の36%だった。
 自国民にも歓迎されない五輪。それは「皆が楽しめる状況ではないからだ」と、生活困窮者を支援するNPO法人ほっとプラスの藤田孝典理事は分析する。
 藤田さんらメンバーは21日夜、日が暮れても蒸し暑さが残る埼玉県のJR川口駅周辺を歩いて回った。数カ月前、8人程度だったホームレスが約20人に増えていた。50~60代の男性ばかり。熱中症になっている人もいた。「クーラーが効いた部屋で、コロナの感染を気にせずにテレビで開会式を見る人がいる一方で、生活困窮者は昼夜を問わず働かなければ生きていけない」
 藤田さんは、五輪が国民の二極化をよりあらわにすると考える。「食料支援の予算が足りない。金をかける必要があるのは五輪ではない。政府は使い方を間違えている」

◆「バブル方式はもはや幻想」

 医療現場では、五輪による感染拡大が不可避との見方が出ている。菅首相が「安心安全の五輪のため」と唱える、選手らを隔離して国民と接触させないバブル方式が機能していないからだ。選手らは一般客と同じ飛行機で来日し、空港内の動線も厳格には分けられていない。選手らが受ける抗原検査やPCR検査の正確性を疑問視する声もある。
 ツイッターなどオンラインで開催反対を訴えている日本女医会理事の青木正美医師は「バブル方式はもはや幻想。選手村で感染が一気に広がり、途中で大会が中止になってもおかしくない」と最悪の事態を想定。さらに、「開幕した以上、考えなければいけないのは選手らをどうやって安全に帰すか。できなければ、世界中から開催の責任を問われる」と危惧する。
 1998年の長野冬季五輪をきっかけに結成させた「オリンピックいらない人たちネットワーク」の江沢正雄さんは、過去の苦い経験から中止を求めている。
 長野市では五輪後、期待された地域の活性化は起きなかった。市はスピードスケート会場など6施設の建設費のうち487億円を市債(借金)で賄い、完済まで20年かかった。維持費も負担になっている。「五輪後も住民の生活が続くのを忘れてはいけない。経験した自分たちだからこそ、『もう遅い』とか『長野とは違う』と言われても中止しろと発信し続ける」

◆「大義なき五輪、あまりに罪作りだ」

 「復興五輪」を掲げて招致し、「人類がコロナに打ち勝った証し」にすり替わった東京五輪。福島県三春町にある福聚寺ふくじゅうじ住職で作家の玄侑 宗久げんゆうそうきゅうさんは「大義なき五輪であり、あまりに罪作りだ」と批判した。
 海外のみならず福島では国内の観客も受け入れ中止になり、復興した姿を直接見せようとしていた被災者の期待はしぼんだ。選手村の食堂で使われる被災地の食材も、産地は表示されない。「政府の巧言令色ぶりに幻滅さえ感じている」
 玄侑さんは、改めて五輪に懐疑の目を向ける。「政府の中で、命を何よりも大切にするという考えが揺るがなければ、パンデミックの今、開催はあり得ない。いったい彼らの大義とは何なのだろうか」

◆デスクメモ もはや退場してもらうほかない

 いろいろあっても、始まれば少しは盛り上がるのだろうと心のどこかで思っていた。ところが、街中を歩いても、そんな雰囲気は全く感じられない。これほど反対の声が強く、国民の命を危険にさらしているのに、十分な説明も決断もできない首相。もはや退場してもらうほかない。(千)
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