MISIAさん国歌独唱 五輪開会式、レインボーカラーの衣装に込めた思い

2021年7月23日 21時36分
 「多様性と調和」を掲げる東京五輪・パラリンピックには、性的少数者(LGBT)だと公表した史上最多の選手が出場する。ただ日本人は含まれていない。国会でLGBT理解増進法案の提出が見送られるなど国内の差別解消の取り組みは遅れており、LGBT当事者は「理解を広めるきっかけになれば」と期待している。(臼井康兆)

五輪の開会式で国歌を独唱したMISIAさん=東京都新宿区の国立競技場で

◆LGBT「支援のメッセージ」

 23日の開会式。「君が代」を歌った歌手MISIAさんの白い衣装には、裾にカラフルなフリルがあしらってあった。LGBTの象徴、6色の「レインボー・フラッグ」を思い起こさせるデザインだ。
 テレビを見たNPO法人「グッド・エイジング・エールズ」の松中権代表(45)は「LGBTを支援する、というメッセージになる」と感無量だった。
 松中さんは昨秋、LGBT当事者らの交流拠点「プライドハウス東京レガシー」(東京都新宿区)を開設した。資金集めのため、都内で開いたコンサートの出演者の1人がMISIAさん。セクシュアリティー(性の在り方)の多様性に共感を寄せ、NHK紅白歌合戦の舞台でレインボー・フラッグを掲げたり、海外のLGBTパレードに一緒に参加したりしてきた。
 「多くの当事者が、希望を読み取ると思う」。松中さんは語った。

◆公表160人超が参加、史上最多

 スポーツ界では「男性らしさ」「女性らしさ」が重要な要素となったり、他選手と控室を共用したりする事情もあって、同性愛がタブー視されてきた。
 2014年ソチ冬季大会の開催地ロシアに対し、未成年者に同性愛への関心を助長することなどを禁じた同性愛宣伝禁止法を巡り、欧米から人権侵害批判が高まった。国際オリンピック委員会(IOC)は同年、性的指向による差別禁止を五輪憲章に盛り込んだ。
 これを受け、16年リオデジャネイロ夏季大会では、50人超の選手が当事者だと公表。オンラインマガジン「アウト・スポーツ」によると、今大会は公表済みの160人超の外国人選手が参加し、史上最多という。

◆社会の理解を

 欧米などで同性婚を法的に認める国が増えているが、抑圧政策を取る国も現れている。ハンガリーでは今年、ロシアに似た新法が成立。ポーランドでは「LGBTフリーゾーン(排除区域)」を宣言する自治体が相次ぐ。中東やアフリカには同性愛が死刑の対象となる国もある。

プライドハウス東京の運営について語る松中権代表=東京都新宿区で

 松中さんは「日本でも笑いのネタにしたり、いじめたり、特別視したりするなど、真綿で首を絞めるような差別や偏見が存在する。悩んで自殺する若者もいる」と指摘。
 昨年、若年層の当事者約1600人に行ったアンケートでは、自分のセクシュアリティーを両親に隠すなど、家族との同居生活に困難を抱えているとの回答が7割超に上った。
 松中さんは、大会組織委員会やスポンサー企業への研修など啓発活動を続けてきた。国内のスポーツ界に当事者だと公表する選手がごく少ないのは、社会の受容の遅れのためだという。
 「同性パートナーのことを周囲の人に自然に話したり、自身の性自認に素直に暮らしたりできる世の中にしたい。大会選手が公表すれば、当事者に勇気を与え社会の理解を大きく広げる可能性がある」と話した。

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