歓声なき五輪開会式 世界はどう見たか 思惑、同情、皮肉…主要国に透ける政治判断

2021年7月24日 20時40分
 新型コロナウイルスの感染対策で、異例の無観客開催となった東京五輪の開会式。主要国の政府や市民らの反応は、「期待する」「最善の決断ではない」など、さまざまに分かれた。コロナ禍での感染リスク拡大の懸念より、今後の大会開催へ日本の協力を取り付けたいとの政治判断も透けて見える。(北京・坪井千隼、パリ・谷悠己、ロンドン・藤沢有哉、ニューヨーク・杉藤貴浩)

23日、フランス・パリのパブリックビューイング会場で開会式を見守る人たち=谷悠己撮影

◆総じて前向きな中国 ボイコット回避狙う?

 来年2月に北京冬季五輪を控え、五輪熱が高まる中国のメディアは、開会式を大きく報じた。
 総じて前向きな報道で、24日付の共産党機関紙・人民日報系の環球時報は「新型コロナは東京五輪が直面する最大の課題だが、開会式は順調で、課題克服のチャンスは十分にある」と期待感を寄せた。北京冬季五輪へは、新疆ウイグル自治区の少数民族弾圧問題などを理由に国際社会でボイコット論も浮上。中国としては、北京大会へ日本の協力を取り付けたい思惑とみられる。
 北京の女性会社員(38)は東京五輪の開会式について、「ドローンの演出や歌舞伎が日本らしくてすてきだった」と話した。

◆同情寄せる欧州 仏大統領は「開催当然」

 次回2024年パリ五輪開催国のフランス。メディアの報道は、難しい対応を迫られた日本に同情的な内容が目立った。来日中に仏公共放送の五輪中継に出演したマクロン仏大統領は「ウイルスと共存しないといけない今、開催は当然だ」と強調した。
 パリのパブリックビューイング(PV)会場で開会式を見守ったジェロームさん(46)は「スポーツは人生の重要な一部。こうして見るだけでも元気づけられる」と話し、マチューさん(32)は「観衆がいない五輪は寂しい。パリはこうならないといいが」と危惧した。

23日、フランス・パリのパブリックビューイング会場で柔道などの競技種目を体験する人たち=谷悠己撮影

 開会式のPVは、19日にコロナ規制がほぼ撤廃された英ロンドン各地でもあった。規制撤廃前のサッカー欧州選手権で6万人超の観客入場を容認したロンドン。対照的な東京五輪の無観客開催に、PV参加者からは「正しい判断」と賛意の一方、「選手がかわいそう」との声も。ビドッティさん(41)は「無観客でも、五輪選手は今の世界に必要な喜びと一体感をもたらすはずだ」と期待した。

◆冷めた米国「客が来ないパーティーみたい」

 米国ではテレビ各局が開会式の模様を詳報するなど、五輪開幕に一定の関心を示したが、コロナ感染拡大への不安や反対デモも同時に伝え、祝祭ムード一色とはなっていない。
 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は開会式について「高官と報道陣だけの孤独なスタジアム」で行われ、「招致に成功した8年前の喜びには遠く、この国の長所や五輪の高揚感を示すはずだった式典は作り笑いのようなものになった」と評した。東部ニューヨーク市の元保育士キラ・シェヌフさん(71)は「演出は美しかったが、食事も飲み物も用意したのに客の来ないパーティーみたい」と話した。
 米国では国民の約半数がワクチン接種を済ませたが、未接種者を中心にデルタ株の感染が拡大中。西部カリフォルニア州のマーケティング業ヘレナ・シャノンさん(25)は「接種が進んでいない日本に、世界中から多くの選手を招いたのは最善の決断ではなかった」と疑問を呈した。

関連キーワード

PR情報

国際の新着

記事一覧