《宮﨑香蓮の大人の社会科見学 》株式会社キングジム 「オフィスを明るく」という想いから数々の商品開発に挑む文具メーカー『キングジム』の挑戦

2021年8月11日 09時45分

女優・宮﨑香蓮が、東京を拠点とした、歴史を重ねている企業に訪問し、自らインタビュー取材します。取材先では、「ヒットの秘訣」「受け継がれている歴史や大切にしているもの」を中心に様々な『モノ・ヒト・コト』をお聞きし、歴史について学んだり、業界ならではのお話、これからについて発信していきます。

ビジネス文房具の味方・キングジム
今回の取材先は、白い背表紙に正方形マークの、代表商品「キングファイル」で有名なキングジムさんへ伺いました。ファイルだけでなく、電子文具「テプラ」や「ポメラ」などオリジナリティあふれるアイデア商品が注目されています。そこで、開発者でもあるキングジムの取締役 常務執行役員 亀田登信さんに幅広くお話をうかがいました。

整理整頓から生まれた事務用品

創業者・宮本英太郎氏が考案した人名簿。創業当時、アイデア商品として生まれたもの。

 「キングジム」創業者の宮本英太郎氏は発想力豊かな人物でした。創業した1927年、宮本氏が生み出したのは「人名簿」。住所録のようなもので、記入する手間が省けるように、はがきの差出人の欄を切り取ってカードのように整理整頓できるアイデア商品でした。印鑑バージョン「印鑑簿」も共に生み出されました。

当時の時代背景を聞きながら、アイデア商品について興味津々にインタビューする宮﨑さん。


 この二つの発明から、創業当時の社名は「株式会社名鑑堂」となりました。書類整理やビジネス向けの事務用品を中心に作っていく中で、特にファイルが人気になっていきます。1964年、オフィスを明るくしようという思いからデザインにもこだわり、生まれたのが「キングファイル」という商品です。白い背表紙に、カラフルなマークは、見出しが広い面積で書けて、遠くから見てわかるように、そして色で分類ができるようにしました。機能面も考えられたデザインで、この商品が大ヒットとなります。ファイルのとじ具を両側から外れる形(書類の出し入れを前からでも後ろからでもできるように)に改良したり、ゴミの分別がしやすいようにしたりと、細かくアップデートしながら、50年以上販売されているロングセラー商品です。発売当時、日本は高度経済成長の最中で、キングファイルは争奪戦状態!在庫管理の方は「どの店にどう振り分けるか」が大変だったそうですよ。

初代テプラの開発担当だった取締役 常務執行役員 亀田登信氏。アイデア商品が生まれる背景やチャレンジ精神の大切さをお話いただきました。


 次に訪れたのはOA化(オフィスオートメーション化)の波でした。ワープロやパソコンが登場し、オフィス用品の定義も変わっていきます。1970~80年は「ファイルのキングジムです」と電話に出るほど、ファイル関連製品一筋だったこの会社でも、OA化に即した製品を開発しようと、模索し始めます。
 そんな中、ファイルの見出しを書くためのツールが作れないかと、生まれたのが1988年に発売された「テプラ」でした。ファイル整理のときに、背表紙にワープロで文字を打ってプリントして切って貼る作業が大変だという声もあり、まさにかゆいところに手が届く大ヒット商品となりました。まだパソコンも個人向けには浸透していなかった時代だったからこそ「機械の文字を個人で作れる手軽さ」が受け、家庭用として購入される方が多かったそうです。私も「テプラ」を使っていましたが、自分でシールが作れる!ということにワクワクしたのを思い出しました。テプラ初号機は文字を打つのがダイアル式。これは、キーボードに慣れていない人にも手にとってもらいやすくするために考えられたもの。とにかく「文房具っぽく」というコンセプトで開発されていたそうです。時代にあわせてキーボード版にアップデートし、今ではスマホからプリントできる機種も登場しています。コロナ禍で整理整頓する人たちからの需要が増え、テプラを活用して整理をする方も増えたそうですよ。

左から)初代ダイアル「テプラ」(復刻版)、定番の「テプラ」PRO、スマートフォン専用モデル「テプラ」PRO“MARK”SR-MK1


 

「ポメラ」誕生で得たものとは


 キングジムの電子文具はまず社内で商品企画をして、次にその企画した商品を作ることができるメーカーを探すというやり方です。その際に、ホットすぎる技術に注目するのではなく技術が成長しきった分野に目を向けています。最先端の技術は進歩が速いため、せっかく作った商品がすぐ陳腐化してしまうからです。最先端の技術ではなく、すでに広く使われていたり、安定して使える技術をうまく商品にしていくのがキングジムの強みと言えます。

テキスト入力に特化したポメラの商品。 左)ポメラDM200 右)ポメラDM30( ※現在、DM30は販売終了)


 パソコンがある時代に、画面は白黒で機能はメモを取るだけ、と割り切って、誕生したのが2008年発売の「ポメラ」です。開発当時のパソコンは動作が重く、起動やシャットダウンにとても時間がかかるものでした。このような状況でポメラの開発担当者は「メモをとりたいだけなのに」とストレスを感じていました。ただパソコンよりスペックを落とし簡素化したウルトラモバイルと呼ばれるデバイスはすでにあったので、ポメラを商品化しても売れるのか疑問は残っていました。そんなとき社外取締役のひとりの大学教授から「絶対に欲しい」という話が!その方は飛行機や新幹線の中で執筆をする際、起動が早く電池の減りも少ないポメラは最適だと発言したのです。
 それでもキングジム社内では「ほんとに売れるのか?」という疑念がありましたが、その声を信じて商品化に至ったそうです。発売後は、ガジェット好きの消費者と、筆記具がそのまま電子機器に置き換わったような感覚から、プロの物書きの方々からの熱い支持が出てきました。発売当初はカラーバリエーションを増やしたりもしましたが、実直に使っているユーザーが多いことに気付き、売り方やデザイン性も徐々に定まっていったそうです。
 ポメラ発売の前後で「キングジムはなんだか面白いことをしているな」と会社の印象も大きく変わり、メディアで取り上げられる回数も増えました。また社内でもターゲットをある程度絞った商品でもいけるぞ!という気運が高まり、このあとに様々な商品が生まれやすくなりました。

アルコールディスペンサー「テッテ」。市販の消毒液が利用可能なのでオフィスだけでなく、ご家庭での利用にも人気の商品。

 最近のキングジムで特に好調なのが、アルコールディスペンサー「テッテ」という商品。コロナ禍ということもありますが、実はその前から開発が行われていたそうです。「事務用品とアルコールスプレー?」と不思議に思ったのですが、オフィスのユーザーに届く販路を持っているため、ユーザーの声を反映した商品をという中で開発されたものだそうです。
「オフィスで使ってもらえるもの」のバリエーションを増やしていこうというのがキングジムの商品開発。そのチャレンジングな姿勢には「ポメラ」の成功が大きく影響しています。売れるかどうか不安な商品にも、意外にファンが多かったという体験から、恐れずに新商品を出し「10本のうち1本ホームランを打てばいい」というマインドを社内で共有しているようです。
 亀田登信氏は「文房具というものは単機能だからこそ使用者によって幅が広がるんですよ」とおっしゃっていました。開発者も気づかないような魅力を私たちユーザーが発見することができる。開発者もユーザーの新しい使い方を楽しんでいるからこそ、キングジムは愛されているんだなぁと感じました。これからも新しい画期的な商品の誕生を楽しみにしております!

取材後記

キングジムといえば、「寄り添うTwitter」として知られ、公式Twitterが面白いと思っている方も多いのではないでしょうか。新たな挑戦にも好意的な会社さんなのかなぁ、と想像していたのですがまさにその通り。このマインドには「ポメラ」の成功があったというお話が興味深かったです。商品開発に関して、社長自ら「責任はとる」と言われているそうですよ。なんとも心強い。しかし「10本に1本とは言わず、ホームランを毎回狙うんですが…」と担当者さん。お話伺いながら「これ売れるかなぁ」という若干の不安すらも楽しんでいらっしゃるように勝手ながら、感じました。記事内で紹介しきれない商品がたくさんありますのでキングジムさんのHPも覗いてみてください!インタビューさせていただいた、取締役 常務執行役員 亀田登信さんありがとうございました!
《今回の取材先》株式会社キングジム

ビジネス用の事務用品を企画・製造販売する事務用品文具メーカー。代表商品である「キングファイル」は、国内シェアNo.1を誇る。電子文具「テプラ」や「ポメラ」など独創的な商品開発においても注目されている。ビジネス向けだけではなく、商品のバリエーションを増やし、一般向けの商品にも力を入れて新しい挑戦をしている。
住所:東京都千代田区東神田二丁目10番18号
公式ホームページ
公式Twitter





PROFILE
宮﨑香蓮(みやざき かれん)
1993年11月20日生まれ。2006年「第11回全日本国民的美少女コンテスト」演技部門賞を受賞し、女優として活動中。NHK大河ドラマ『花燃ゆ』ではヒロインの幼馴染・入江すみ役として出演するなど、いま活躍を期待される若手女優の代表格。
【お知らせ】
・8月19日(木)19:30~
NHK BSプレミアム「ニッポンぶらり鉄道旅」(京王井の頭線)
公式サイト
・テレビ朝日 木曜ミステリー「遺留捜査」(滝沢綾子役)
・舞台「マミィ!」(赤坂レッドシアター)
・SSFF&ASIA 2020 ジャパン部門ノミネート作品「BENTHOS」主演(美嘉役)
・東京2020オリンピック聖火リレー 長崎県内走行ランナー
・島原ふるさとPR大使

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