努力家の阿部一二三、天才肌の詩「2人は兄妹であり、ライバル」 切磋琢磨でつかんだ史上初の快挙<柔道>

2021年7月25日 21時34分

兄と妹そろっての同日優勝を果たし、金メダルをかじる阿部一二三(左)と妹の詩 =いずれも日本武道館で

 歴史的な瞬間は、対照的な表情だった。兄は畳の上で空を見つめる。先に金メダルを決め、畳の外で見守っていた妹は、満面の笑みで、両腕を突き上げて飛びはねた。柔道男子66キロ級の阿部一二三(23)=パーク24、女子52キロ級の詩(21)=日体大=が兄と妹による同日金メダルを果たした。(森合正範)
 2人の夢が結実した。
 始まりは2013年9月8日。一二三の大会を応援するため、中学1年の詩は父浩二さん(51)、母愛さん(49)と埼玉県のホテルに宿泊していた。3人は早朝に起きてテレビをつけた。「トーキョー」。画面から聞こえてくる声。20年東京五輪の開催が決まった瞬間、気持ちが高ぶり、思った。「東京五輪に出て優勝したいな」。その後、両親と話した。「一二三と出られたら最高やな」
 努力家の兄と、天才肌の妹。スター性のある2人は「兄妹であり、ライバル」と口をそろえる。

男子66キロ級で優勝し、ガッツポーズする阿部一二三

 一二三は14年からシニアの舞台でも台頭。詩は常に先を走る兄を追い掛け、一二三は妹に負けまいとさらに成長を遂げる。18年世界選手権でそろって世界一に輝き、順風に見えた。
 一二三が3連覇を狙った19年世界選手権、丸山城志郎(ミキハウス)との準決勝で敗れた。ウオーミングアップ会場の画面に見入っていた詩は、自分が負けたかのように悔しがった。「ホンマ、ホンマ、何やっているの!」
 兵庫・夙川学院中時代から指導する垣田恵佑さんは現場でその言葉を聞き、少し驚いた。「この兄と妹は本気で『2人で金を取ってやろうぜ』と思っている。高め合っているんだな」

女子52キロ級で優勝し、喜ぶ阿部詩

 詩が先に五輪代表を決め、今度は一二三が追い掛ける番。昨年12月13日。異例となる丸山とのワンマッチ。24分の激闘を制し、代表を決めた。一二三は泣きじゃくった。会場では詩が歓喜のあまり、泣き崩れていた。「全身震えてました。あの闘いを見られたことに感謝します!」
 時に引っ張り、時に追い掛け、切磋琢磨してつかんだ2個の金メダル。表彰式の前、顔を合わせた。「おめでとう」。互いにそう言って抱き合った。2人で歩んだからこそ、高みにたどり着いた。

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