「一つの場所から同じゴールを一緒に目指す」 東京五輪ボランティアとして活動 聴覚障害者アスリート早瀬久美さん

2021年7月26日 11時00分

手話を使って話す早瀬久美さん(手前左)と山田泰伸さん(同右)=東京・府中市

 

 24日から2日間行われた東京五輪の自転車ロードレースで、大会ボランティアとして活動した聴覚障害者の薬剤師早瀬久美さん(46)。自身も来年にブラジルで行われる聴覚障害者の五輪「デフリンピック」の自転車競技で、3度目となる日本代表に内定したアスリートでもある。国際大会で選手を支える側から見つめた今回の経験を生かし、4年後の日本招致を目指すデフリンピックにもつなげたいと考えている。(神谷円香)

◆国際大会の経験を生かして

 横浜市に住む早瀬さんはロードレースのスタート地点、東京の武蔵野の森公園で活動した。「国際大会の出場経験があるので、次に何が必要か考えて行動できたと思う」。静岡・富士スピードウェイまで走る選手たちに飲み物や氷を配ったり、会場の動線を整えたりした。
 幼いころに学んだ手話を母語とするろう者の早瀬さん。健聴者との通訳は、手話通訳士の大会ボランティア山田泰伸さん(28)=埼玉県所沢市=が担った。支障なく活動した早瀬さんだが、話し掛けてくる他のボランティアらは少なかった。「遠慮するのかな」と思うが、壁があるような感じはやはり寂しい。
 早瀬さんは小学校から一般の学校に通い、聴覚障害が資格取得の障壁でなくなってから、日本初のろう者の薬剤師になった。普段は大学病院に勤め、今は新型コロナウイルスの感染防止に気を配りつつ、筆談などで工夫しながら健聴者とのコミュニケーションを図っている。

◆会場で感じる共生への歩み

 大会ボランティアの研修などを担う日本財団ボランティアサポートセンターは、ボランティアの中で手話のできる人にろう者の通訳を依頼し、研修をしてきた。それに応じた山田さんは「ボランティアは皆で一緒にやっていこう、という雰囲気があるので、遠慮せず話し掛けてもらえば喜んで通訳する」と話す。必要な情報だけでなく、隣の人がどんな話をしているのかも訳し、聞こえる人の耳に入るのと同じように、周りの様子が理解できるよう伝えている。
 「多様性と調和」を掲げる東京五輪。国や文化の違う選手たちが一斉に走りだすのを見届けた早瀬さんは「一つの場所から同じゴールを一緒に目指す姿に意味がある」と感じた。パラリンピックでも同じ会場で大会ボランティアを務める。二つの大会を現場で感じ、共生社会への歩みを続けていきたいと考えている。

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