<ひと ゆめ みらい>心の居場所求め 創作を 紙芝居クリエーター・大谷祐人さん(37)=国分寺市

2021年7月26日 07時09分

作品の前に立つ大谷祐人さん=武蔵野市で

 紙芝居クリエーターで画家の大谷祐人さん(37)は十九歳の時、統合失調症を発症して以来、心の病と向き合いながら創作活動を続けている。
 「世界が破滅する」との妄想に取りつかれ、救急車で運ばれたことや、閉鎖病棟に九日間隔離された経験もした。精神科に通ううち「もう一人の自分」のささやきはいつしか聞こえなくなった。「服薬は効く。最近は、心に余裕ができた」。今は国分寺市の自宅でアクリル絵の具と筆を取り、キャンバスに向き合う日々だ。「絵を描いていると心が安らぐ。心の隙間が埋まるのを感じる」。テーマは一貫して「心の居場所」だ。
 描く題材はイヌやネコ、子ブタ、カエル、ウサギなど身近な動物たち。造形教室に通った時期もあったが長続きはせず「絵はほぼ独学」という。独特の筆致と配色で動物たちを描いてゆく。
 障害者アートの多くの作品を生み出している先輩に勧められたのがきっかけとなり、二〇一〇年から個展で自身の作品を発表するようになった。最近は年に一〜二回、障害者アートを扱うギャラリーなどで個展を開いている。絵に接した人から「ほっとする」「癒やされる」と言われ、売れる点数も次第に増えていった。動物たちへの優しいまなざしや筆致が見る人の心に響くのを目の当たりにすると創作意欲がかき立てられた。
 ただ、自分の作品に障害がどの程度影響しているのかは「自分でもつかみきれていない」。障害者アートは「アールブリュット」(生の芸術)とも呼ばれ、年々人気が高まっている芸術分野だ。だが、「すべての障害者に門戸が開放されているわけではない」との認識から「自分の作品はその『手前』で楽しんでいただければ」と笑う。
 創作活動のもう一つの柱は手作り紙芝居の制作だ。〇八年に紙芝居文化推進協議会主催の「手づくり紙芝居コンクール」で作品「つきのゆりかご」が「大賞」を受賞。〇九年と一八年のコンクールでも優秀賞に輝いている。
 「紙芝居づくりはストーリーづくりが大事」。高校卒業後、二年間通った映画専門学校で学んだ映画制作のノウハウが生きたという。わずかな障害者年金と創作活動で生活は苦しいが「あせらず、ゆっくり、無理をせず」が信条だ。(花井勝規)
<おおたに・ゆうと> 武蔵村山市出身。高校卒業後、映画専門学校で映画制作を学ぶ。2008年に「手づくり紙芝居コンクール」で作品「つきのゆりかご」が大賞を受賞した。10年からは身近な動物をモチーフにアクリル画の個展を続けている。

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