論文集「岡上の山伏」 郷土史家三輪さん 「最後の仕事」出版

2021年7月26日 07時10分

「岡上の山伏」に掲載した、カラスの形を組み合わせた文字が刻まれた護符「那智滝宝印」の版木の写真

 日本民家園の元園長で郷土史家・三輪修三さん(82)=多摩区=が、江戸時代に川崎市麻生区岡上に定住した山伏を研究した論文集「岡上の山伏」(みなと出版)を出版した。「最後の仕事」として、地域住民と山伏の関わりに迫った。

三輪修三さん(本人提供)

 三輪さんは北海道出身。国学院大で神道学者の西田長男名誉教授に学び、塩釜神社(宮城県)の博物館で学芸員を務めた後に川崎に転居した。一九七二年に市教育委員会の学芸員になって以降、市の郷土史を四十年以上研究し「橘樹郡衙(たちばなぐんが)と影向寺(ようごうじ)」(市文化財団)、「名刹(めいさつ)王禅寺」(かわさき市民アカデミー)などを発表。川崎市文化賞も受賞している。
 しかし数年前に海外旅行先で目の痛みを覚え「限界を悟った」という三輪さん。「最後の仕事」として特徴のある岡上の山伏を選び、研究を進めた。
 山伏は、山岳信仰を母体に仏教や神道と融合していった修験道の行者。山から山へと修行したが、徳川幕府は、そのとらえどころのなさから、山伏に定住を促したとされる。
 岡上の山伏だった家には、カラスの形を組み合わせた文字が刻まれた護符の版木なども伝わっていた。新著では、こうした史料とともに、地域の人に護符や薬を与えたり、また宗教家として熊野三山(和歌山県)に行くことで諸国の情報を持ち帰ったりした山伏の実態に迫った。
 三輪さんは「一般には定着すると地域の農民になって共同体に入った。岡上では、明治の維新政府に禁止されるまで修行を欠かさず、大飢饉(ききん)や大地震のときに加持祈祷(きとう)を行うなど、山伏としての使命を果たした」と熱く語る。同著について「多くの皆さんの助けで、私の地域史研究最後の論考ができた。知っているようで知らない山伏の世界に触れてみてほしい」と話している。税込み千五百円。市大山街道ふるさと館(高津区溝口三)の通信販売などで購入できる。(山本哲正)

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