企業内大学 学びを武器に 高度な知識持つ社員を育成 社内外から講師 ブーム経て定着

2021年7月26日 07時16分

ダイキン情報技術大学で学ぶ若手社員=大阪府摂津市で(ダイキン工業提供)

 少子化などで人材の獲得が難しい今、社員の知識やスキルを伸ばそうと「企業内大学」を設ける会社が増えている。法律に基づく大学ではなく、社独自の研修制度を意味し、年単位で勉強に専念させたり、先輩社員が講師役を務めたりと内容はさまざまだ。技術の進歩も目覚ましい中、専門家は「学び続ける大切さは増しており、設置は企業にとって武器の一つ」と指摘する。 (海老名徳馬)
 空調機器大手のダイキン工業(大阪市)。二〇一七年開講の「ダイキン情報技術大学」には、四百人ほどの新卒社員から、毎年百人の希望者が「入学」する。
 二年間の在学中は、就業時間と同じ午前九時から午後五時半まで勉強に専念。座学や現場に出向いての課題解決などを通じ、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)について学ぶ。講師は大阪大の教授や他企業の専門家らで、修士レベルの知識を身につけることを目指す。
 AIやIoTは、新商品や新サービスを生み出すのに欠かせない。人の体の状態を分析して快適な空間を自動でつくり出したり、空調が故障する可能性が高い場所や時期を予測して修理に行ったり、多様な活用法が考えられるという。
 AIなどの専門家の雇用には高額な人件費が必要なケースが多い。外資系企業との競争も激しさを増す中で、大学設立から携わる人事本部役員待遇の今井達也さん(59)は「このままでは生き残れない。『採れないなら自前で育てる』というトップの判断があった」と強調する。
 同社は一七年、大阪大と情報科学の研究に関する包括連携契約を締結。十年間で五十六億円の資金を提供するなど、二三年度末までにAIの知識を持つ社員を千五百人まで増やす計画だ。
 企業内大学は米ゼネラル・エレクトリック(GE)による一九五六年の設立が最初とされる。日本では六一年に日立製作所が日立経営研修所を設置。二〇〇〇年代にはソニーのソニーユニバーシティやトヨタ自動車のトヨタインスティテュートなど設立が相次いだ。
 教育機関と企業との仲介などを手掛ける企業内大学協会代表の冨岡治朗さん(52)によると「経営者や企業が明確な目的を持って設ける」のが特徴。「会社から社員へ『ともに学んで成長しよう』というメッセージを伝える役割がある」と説明する。同協会が四月に実施した調査では、形態はさまざまだが、東証一部上場の二百二十五社のうち、企業内大学を持つのは百二十一社と半数を超える。
 導入の動きは中小企業にも広がる。社員数百五十三人の三和建設(大阪市)は、人材育成を重視する経営理念「つくるひとをつくる」を実現するため、一七年に「SANWAアカデミー」を開講した。
 年間七十二講座のほとんどで、講師を務めるのは社員だ。内容は設計や営業、法律の知識など多岐にわたる。専務取締役の谷直人さん(50)は「外に出ていくお金はほとんどない。手間や労力はかかるが、社員の成長を考えればマイナスにはならない」と話す。
 今年からは、受講した実績が評価の対象になる制度も導入。谷さんは「講師役の社員も、あいまいな部分があれば一から調べ直して臨む。講義する側も勉強になる」と意義を強調する。
 技術の進歩や新型コロナウイルスの感染拡大など、将来が見通しにくい時代。冨岡さんは「ビジネスが変化すれば人材育成の形も変わる」と指摘。「企業内大学はブームの時期を過ぎ、定着の段階に入った。『上を目指して学べる』というメッセージは、人材確保の面でもプラス」と話す。

関連キーワード

PR情報

ライフスタイルの新着

記事一覧