<ひと物語>「生涯現役で奮闘」 地産野菜使用のジェラート販売・野島康子さん

2021年7月26日 07時17分

粉末加工した地場野菜を練り込んだジェラートシリーズを手にする野島さん=いずれも所沢市で

 狭山のサトイモやルビーポテト、所沢のニンジン、枝豆…。地元生産者が手塩にかけた野菜を、粉末(パウダー)に加工して練り込んだのが「埼玉のおやさいジェラートシリーズ」。口に含むとフルーツのような甘みと香りが広がった。素材の鮮やかな色合いも、そのまま生かされていた。
 「新型コロナウイルスの影響で、地産野菜が出荷できなくなっている。私の粉末加工技術が新たな販路につながるなら、うれしい」。商品を開発した所沢市の食品加工「いろどり」の野島康子代表(74)が、柔らかくほほ笑んだ。
 実家は農家で、四十年間勤めた幼稚園教諭時代から「地域の食材を大切に」をモットーにしてきた。定年退職後も「子どもたちに地産野菜のおいしさと魅力を伝えたい」という思いは変わらず、いろどり設立に至った。
 尽力したのが、保存が利き、子どもたちに喜ばれる菓子やジェラートに混ぜ込める野菜の粉末加工技術だった。
 「二〇一六年ごろから大小の業務用乾燥機、粉砕機、六十メッシュ(〇・三ミリ)のふるいなどをそろえ始め、一年間の試行錯誤の末、工程のプログラミングを完成させた」と野島さん。
 ジェラート作りに使うサトイモとルビーポテトは、農林水産大臣賞を受賞した狭山市の白倉崇広さん、ニンジンは無農薬にこだわる所沢市の熊坂亜矢さんから調達。二人は「地産野菜を子どもたちに」という野島さんの思いに賛同し、協力を申し出たという。

地産の枝豆を大型乾燥機に詰める野島さん

 思い返すと、いろどり設立を決断した背景には、県学校栄養職員だった夫の孝さんとの突然の別れがあった。孝さんは〇九年、野島さんの外出中に自宅で脳出血を発症し、六十八歳で帰らぬ人となった。
 「生きがいを失い、うつになりそうだった。治療にお金を費やすくらいなら、それを元手にやりたかったことを貫こう!」
 市内のイベント販売から始めたおやさいジェラートは次第に注目を集め、今年五月に開館した所沢市の観光情報・物産館「YOT−TOKO(よっとこ)」で常設販売にこぎ着けた。一個三百五十円、三個セットで千円。今後は、埼玉のおみやげとして販路を広げていきたい。
 「百歳までできるか分からないけれど、生きている限り生涯現役で奮闘したい。私と共に過ごし、学ばせてくれた子どもたちに感謝しながら…」。古希を超えてなお、先を見据える瞳がキラキラと輝いて見えた。 (加藤木信夫)
<のじま・やすこ> 入間郡福原村(現在の川越市)出身。1967〜2007年、狭山市立幼稚園などで教諭・園長を務める。県教委の幼稚園研修指導員を経て、地産野菜加工業へ転身。地産「里芋ピザ」で15年所沢市ビジネスプランコンペ優秀賞。同年食品加工会社「いろどり」設立、農業生産法人「ナガホリ」商品開発室主任研究員を兼務。

関連キーワード

PR情報

埼玉の新着

記事一覧