<炎上考>「女の子らしさ」って何? 少女たちの自信を奪う社会に問いかけたP&GのCM 吉良智子

2021年7月26日 14時00分
 「女の子らしく走って」と誰かに指示されたら、あなたはどう体を動かすだろうか。そもそも「女の子らしく」何かをするとは―?
 米国に本社を置く世界最大の消費財メーカー「P&G」が、そんな問題提起をするCMを作った。2015年、全米に中継されたナショナル・フットボール・リーグ優勝決定戦、スーパーボウルのハーフタイムショーで放映され、注目を集めた。
 映像では、人種や性別の異なる人々が、「女の子らしく走って」「女の子らしくけんかして」「女の子らしく投げて」と指示される。若い女性は「髪の乱れを気にして内股で走る」演技を、男性はふざけて笑いながら戦うポーズをとった。少年は「ボールを投げたが、すぐに落ちた」様子をパントマイムで表現した。
 だが、同じ指示に、少女たちはまったく違う行動をしてみせた。全員が全力で走り、戦い、ボールを投げたのだ。「あなたにとって女の子らしく走るってどういう意味?」と尋ねられたある少女は、「できるだけ速く走るということ」と答えた。別の少女は「女の子らしく」という言葉についてどう感じるか聞かれ、「誰かにちょっと、嫌な思いをさせようとしている感じがする」と鋭く見抜いた。

「女の子らしさ」の意味を変えようと訴えるウィスパーのCM

 多感な時期に、「女の子らしく」という言葉によって、自分は弱々しい存在だと決めつけられたら―。CMでは、「少女たちの自信は思春期に急激に落ちる」「ウィスパーはそれを変えたい」という字幕が流れる。
 CMの後半は、冒頭で「女の子」をわざと弱々しく演じた女性たちが、全力を出す少女の姿に勇気づけられたかのように力強く発言を変えていく。「女の子たちにどんなアドバイスをするか」と聞かれた彼女らは「あなたはそのままでいい」と答える。最後は女性たちが「自分らしく」「全力を出して」、スポーツに挑む映像で締めくくられる。
 「女の子らしさ」の意味を塗り替えようと呼びかける映像は、同時に「女の子らしさ」ははじめから少女の中に存在せず、それを要求する社会につくられる、ということも教えてくれる。世界中の子どもが「らしさ」にとらわれずにのびのびと成長する。そんな社会を大人はつくる責任がある。

 きら・ともこ 美術史・ジェンダー史研究者

※2021年7月21日東京新聞夕刊に掲載

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