障害者いじめ「告白」、ホロコーストやゆ…差別、偏見「根っこでつながる」<相模原事件5年>  

2021年7月26日 21時42分
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年、入所者ら45人が殺傷された事件は26日、発生から5年を迎えた。神奈川県が設置した鎮魂のモニュメント(慰霊碑)には遺族や元職員、障害のある人らが続々と訪れ、献花した。

再建された園内に設けられた慰霊碑には遺族らが訪れ献花した=相模原市緑区で

 慰霊碑は正門前の広場に設置。殺害された19人のうち、遺族が県に了承した7人の名前が彫られた。これまで遺族が公表していた美帆さん=当時(19)=のほか、6人の名前が刻まれた。
 事件は16年7月26日未明に発生。元職員の植松聖死刑囚(31)が園内に侵入し、入所者19人を殺害、職員を含む26人に重軽傷を負わせた。昨年の横浜地裁での裁判員裁判で死刑判決が言い渡され、その後、弁護人の控訴を自ら取り下げ、刑が確定した。(酒井翔平、曽田晋太郎)

◆「生きる意味がない人なんていない…」

 「生きる意味がない人なんていないことを伝えていくのが自分の役目」。26日午前9時15分、「津久井やまゆり園」に、千葉県の特別養護老人ホーム職員の女性(48)が訪れた。かつてやまゆり園で働き、複数の犠牲者と面識があったといい、慰霊碑前で手を合わせた。(曽田晋太郎)
 のどかな山あいに衝撃が走ったのは5年前。植松死刑囚は逮捕後から裁判が終わるまで、一貫して「意思疎通の取れない重度障害者は生きる価値がない」と差別主張を繰り返した。

◆理念と現実の落差

 同園のある相模原市緑区では24、25日、東京五輪の自転車ロードレース競技が開かれた。その東京五輪・パラリンピックの大会理念は「多様性と調和」。しかし、理念と現実の差の大きさを指摘する人がいた。

殺傷事件から5年を迎え、献花に訪れ手を合わせる和田拓也さん=26日、相模原市緑区で

 「社会はまだまだ共生に進んでいるとは思えない」。東京都中野区の自宅から電車とバスを乗り継ぎ、2時間かけて正午すぎに同園に着いた脳性まひの和田拓也さん(28)は言う。
 理由を聞くと「電動車いすの充電が切れかけて音がなっても誰からも声をかけてもらえない。挙げたら切りが無い」。社会に対し「障害者に関係なく、もう少し皆が周りに気を使えるような社会になってほしい」と願った。

◆被害者家族「共生社会の手だてを」

 大会開幕直前、開会式の楽曲を担当したミュージシャンの小山田圭吾さんが、過去に障害者らへのいじめを告白していた問題で辞任した。さらに、演出を担当した小林賢太郎さんが、かつてホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)をやゆするコントを発表していたとして解任された。
 「2人の問題は、植松死刑囚の差別や偏見と根っこでつながっていると感じた」と相模原市南区の男性(78)は話す。朝のニュースで26日が事件から5年と気付き、午後1時ごろ園を訪れた。小学生の孫を連れてきたのには思いがあるという。「まだ理解できるか分からないが、事件のことを伝えたくて」
 8月に始まるパラリンピックを巡っては、相模原市が遺族や入所者側に事前相談なく、同園で採火式を行うと決めたことに批判が噴出し、撤回する一幕があった。事件で重傷を負った尾野一矢さん(48)の父剛志さん(77)は市に中止を求めた一人だ。献花後「行政には共生社会を実現させるための手だてを真剣に考えてほしい」と注文した。
 午後5時すぎ。職員が慰霊碑のある広場の門を閉じ、日中に献花者や報道陣であふれた現場は再び静けさを取り戻した。約150人が訪れ、献花台には鎮魂の祈りを込めた多くの花が並んだ。

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