最強・大野将平 海外勢に7年間負けなし、その勝負の極意「防衛的悲観主義」とは何か?<柔道>

2021年7月26日 22時31分

男子73キロ級で優勝し、金メダルを手にする大野将平=いずれも日本武道館で

 死闘を制し、深々と頭を下げ、畳を降りた。強さとともに、すごみを感じさせる。柔道男子73キロ級の大野将平(旭化成)が五輪2連覇を成し遂げた。「リオ五輪を終えて、苦しくてつらい日々を凝縮したような、そんな1日の闘いだった」
 初戦から豪快な内股、手堅い寝技。状況に応じて勝利に一番近い引き出しを開けていく。決勝は今年の世界王者シャフダトゥアシビリ。パワーがあり、接近戦を狙う相手と真っ向勝負だ。両者、疲労困憊(こんぱい)になっても、大野の眼光は鋭かった。9分26秒。「とっさに出た」という支え釣り込み足で技ありを奪う。我慢と意地だった。

男子73キロ級で優勝し、ジョージアのラシャ・シャフダトゥアシビリ(左)とあいさつを交わす大野将平

 試合2週間前、大野は言った。「自分が負ける姿を想像して、どうしたら負けるのかだけを考えている」。稽古では常に最悪を想定し、体調が悪い時の準備さえもしておく。自分の弱点にだけ目を向け、嫌なことをつぶしていく。一寸の隙を埋める作業だった。「マイナス、ネガティブなことを考えて勝利をもたらす。防衛的悲観主義」と説明する。この5年、その思考で稽古に励んできた。
 東京までの過程で男子の井上康生監督に「柔道が面白くないです」と心情を吐露したことがある。「全世界が私を倒そうとやってくる。耐えうるには、面白くなくても、つまらなくても、そういう稽古をしないと勝てないんです」
 それはかつて苦い経験があるからだ。2014年世界選手権。前年はオール一本勝ちで世界一になり、「勢いも自信もあった」。しかし、4回戦で格下相手に苦杯をなめた。「負けを想像せず、どう勝つかを考えていた。慢心で足をすくわれた」。以降、海外勢に7年間負けていない。
 決勝後、日本武道館の天井をそっと見上げた。1964年東京五輪も開催された日本武道の聖地。この場所で示したかったのは連覇だけでなく、死力を尽くした相手への敬意。シャフダトゥアシビリと何度も抱き合い、健闘をたたえ合った。(森合正範)

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