菅首相、選挙対策で上告断念か 「黒い雨」訴訟、被爆者救済するのに判決問題視する談話発表へ

2021年7月27日 06時00分
記者団に「黒い雨」訴訟の広島高裁判決について上告断念の方針を表明する菅首相=首相官邸で

記者団に「黒い雨」訴訟の広島高裁判決について上告断念の方針を表明する菅首相=首相官邸で

 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で、菅義偉首相は26日、上告断念を表明した一方、広島高裁判決への問題点を示す政府談話を出すと明らかにした。政府の法的責任は現時点では認めない立場を維持しつつ、高齢化した被爆者を救う政治判断をする手法は、過去にも見られる。

◆直近の内閣支持率ほとんどで最低

 首相は、官邸で記者団に今回の対応を「(判決には)政府として受け入れがたい部分があるので、談話という形で整理したい」と説明した。
 新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、東京五輪・パラリンピックを開催したことで、直近の世論調査のほとんどで内閣支持率が最低を記録している。「黒い雨」訴訟で高齢化した原告をさらに苦しめる対応を取れば、世論の反発がさらに強まりかねない。上告断念は、秋までに行われる衆院選に向けてマイナス材料を増やすことは避けたいという首相の判断があったとみられる。

◆安倍氏も小泉氏も…繰り返される手法

 今回の首相と似たようなケースには、ハンセン病訴訟を巡る2019年7月の安倍晋三首相(当時)の対応がある。ハンセン病元患者の家族への賠償を国に命じた熊本地裁判決について、安倍政権は控訴見送りを決定した。
 安倍氏は首相談話を発表。判決について「いくつかの重大な問題点がある」としつつ、家族が受けた苦痛と苦難に対しては「政府として改めて深く反省し、心からおわび申し上げます」と謝罪し、新たな補償措置を講ずる方針を示した。
 一方で、安倍氏自身がトップを務める政府声明では、同判決には「法律上の問題点がある」と主張。具体的には1996年のらい予防法廃止後も関係閣僚に偏見や差別を除去する義務があったとした点などは認めず、政府の対応に法的な問題はなかったという立場は崩さなかった。
 ハンセン病を巡る訴訟では、元患者本人への賠償を命じた熊本地裁判決に対し、当時の小泉純一郎首相が01年5月に首相談話と政府声明を発表。安倍氏は小泉氏の対応をほぼ踏襲した。(関口克己)

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