<東海第二原発 再考再稼働>(32)原電を廃炉専門会社に 脱原発ネット茨城共同代表・小川仙月さん(57) 

2021年7月27日 07時19分
 決定的だったのは、大学を卒業した一九八六年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故だ。放射性物質による汚染が人体に及び始め、「大変なことになった」と危機感を覚えた。
 八九年一月、東京電力福島第二原発3号機で再循環ポンプが損傷、炉心に多量の金属片が入る大事故が発生した。日本の原発でも、いずれ人に被害が出る事故が起きると確信した。
 そこで公民館などで学習会を始めた。原発を知らない人たちに向け、きちんと判断できる知識を身につけてもらいたいと活動を続けてきた。
 東海第二原発の特異さは、運営する日本原子力発電(原電)が原発専業の会社であること。電力会社は原発が動かせなくても、経営は火力発電でしのげる。原電の敦賀原発2号機(福井県)は、原子炉建屋直下の活断層が指摘され、動かせる見込みはない。東海第二が再稼働できなければ、直ちに経営破綻の危機にひんする。なにがなんでも動かして延命するしか道がない。
 もう一つは、三十キロ圏に九十四万人が密集して生活する異常な立地だ。運転差し止めを命じた今年三月の水戸地裁判決が避難計画の不備を指摘したように、避難計画の立案がもはや不可能な人口規模だ。周辺自治体には、無理な避難計画の策定を強いて多大な迷惑をかけている。
 原電には「東海第二を再稼働しても誰も幸福にならない」ということを分かってほしい。
 運転開始から四十年を超えており、事故のリスクが多い。可燃性ケーブルの火災、放射線の照射を受けて圧力容器がもろくなる「照射脆化(ぜいか)」、また東日本大震災から十年以上、停止した原発を動かすリスクは、原電でも予測できないだろう。運転員の経験不足も深刻だ。
 運転期間は原則四十年だが、原子力規制委員会は二〇三八年十一月までの延長を認めた。再稼働しても十五年ほどで運転できなくなる。
 原電は、廃炉の専門会社に転換する道があると思う。電力会社や原電の原発は、いずれ廃炉を迎える。原電が請け負って廃炉にする仕組みをつくる。敦賀原発の加圧水型炉、東海第二の沸騰水型炉、それぞれノウハウがあり、メーカーにもパイプがある。既に東海原発の廃炉も手掛けている。原電が一番の適格者だ。再稼働というむちゃなばくちを打つより、現実味がある。そのための法制化に経済産業省、そして政治家は動いてほしい。
 原電も国も県も東海村も自民党も連合も地元商工業者も、従来の枠組みを変えられず、漠然と「3・11の前に戻りたい」と考えているのではないか。規制委の審査や新規制基準に適合させる工事が進むのをただ、ぼーっと眺めているのは、大変危険なことだと思う。
 地元の裁判所が、原発の運転を「不可」と判断した事実は、県民の記憶に残る。原電には、地域の企業としてしっかり認識してほしい。(聞き手・林容史)
<おがわ・せんげつ> 1964年、福岡県久留米市生まれ。筑波大比較文化学類卒。会社勤務を経て、2006年につくば市でバリアフリーリフォーム設計事務所を設立。脱原発ネットワーク茨城共同代表。

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