<サブカルWorld>(7)ウマ娘 プリティーダービー 勝たせたい!個性光る娘たち

2021年7月27日 07時32分

スマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のタイトル画面 ©Cygames

 現在、爆発的人気を集めているスマホゲームが「ウマ娘 プリティーダービー」(Cygames)だ。今年2月の配信開始から7月20日までで900万ダウンロードを記録した。聞くと、往年の名競走馬の名を持つ美少女「ウマ娘」を育成するという。女性を馬に見立てるのは悪趣味な気がするし、名馬を雌雄問わず女の子に見立てるのも疑問を感じる人がいそうだが、どうしてこんなに人気を集めているのか。実際にプレーしてみた。
 ウマ娘とは、実在の競走馬の名前と魂を受け継ぐ美少女。外見や体格は人間とほぼ同じだが、耳が馬のように頭の上に付いているのと、尻尾がある点だけが異なる。走る能力は人類とは桁違いで、最高速度は時速七十キロにも達するという。
 ゲームに登場するウマ娘たちは養成学校「トレセン学園」の生徒で、プレーヤーはトレーナーとしてウマ娘を育て、日本ダービー、菊花賞など名称や時期が現実そのままのレースに挑戦する。各ウマ娘に設定された「有馬記念で1着」などのクリアを目指す−のが当初の目標だ。
 実は「ウマ娘」は二〇一八年にアニメの放送が始まり、同時期にゲームもリリースされる予定だったが、配信が先延ばしにされていた。アニメは今年、第二期が放送された。

1998年6月、日本ダービーを制したスペシャルウィーク。鞍上は武豊騎手=東京競馬場で

 さて、私は馬券は買わないが競馬を観(み)るのは好きな五十代。天才・武豊騎手が一九九八年、名馬スペシャルウィークで初めて日本ダービーを制した時のことはよく覚えている。アニメは見ておらず、名馬を一律に美少女にすることに違和感もあったが、手始めに同ウマ娘を育成することに。すると、田舎出身で、亡くなった産みの母と、育ての母の期待を背負って頑張っている経緯などが分かってきて、「うまく育てなきゃ」という気になる。何度も失敗した末に育成を完了すると、ワンピース姿でほほ笑むウマ娘に目を細めた。
 実は、本物のスペシャルウィークも種牝馬は産後すぐに死に、乳母馬に育てられた。本ゲームでは、実馬のエピソードやあだ名、出自、命名の由来などが、各ウマ娘に絶妙に反映されている。私が育成したウマ娘(表参照)のうち、ブロンズコレクターと呼ばれたナイスネイチャはネガティブ思考に描かれる。ウオッカとダイワスカーレットのライバル関係も再現され、ゴールドシップは大きなレースで一着になるとドロップキックを食らわしてくる。実馬を知る人ならにやりとするユーモアにあふれ、「悪趣味」という当初の印象は消えた。無課金ながら、表のウマ娘を楽しく育成している。
 本ゲームを馬主はどう見ているのか。セイウンスカイとニシノフラワーの使用を許可した西山興行社長の西山茂行さん(63)は「名馬をアニメやゲームに使ってもらっては困るという人もいるだろう。ただ、私は、二十数年も前に活躍した馬を思い出してもらえるのなら、それが一番。どうぞご自由にお使いください」と語る。ウマ娘の名から、逆に日本の競馬の歴史を振り返るのも興味深い。実際、プレーヤーは約六割が二十〜三十代との調査もある。
 ところで、ウマ娘が男性に人気なのは分かるが、プレーヤーの二割は女性という。どこが魅力なのか。
 会社員Mさん(24)は「ウマ娘のライブシーンの映像にまず惹(ひ)かれました」と語る。ウマ娘たちは「ウマドル」活動を行うアイドルでもあり、節目のレースで一着になると、ファンの前で他のウマ娘とともに、センターで歌と踊りを披露できるのだ。Mさんの推しは、スマートファルコン。「トップウマドルを目指して頑張っている姿がかわいい。レースに勝たせてあげたい」と語る。競馬については「まったく知らない」と語るMさんだが、「もし競馬場でウマ娘のイベントが開かれ、限定品が売られていたら、思わず足を運んでしまいそう」と話す。

ウマ娘のスペシャルウィーク

 また、NPO引退馬協会は引退馬の育成資金にしようと、毎年、存命のナイスネイチャの誕生日に寄付を募集しているが、例年百数十万円ほどが、今年は三千五百万円を超えた。これもウマ娘効果とみられ、新たな競馬ファンを育てているようだ。
 当の競馬関係者はどうか。本紙姉妹紙「中日スポーツ」で競馬を担当する関俊彦記者(31)もプレーヤー。「本当に競馬好きの人がウマ娘を設定したのだと分かる」と話し、騎手や厩務(きゅうむ)員でプレーしている人もいるという。では、ウマ娘は勝ち馬予想にプラスになるのか。関記者は「推しのウマ娘と関係が深い馬の馬券を思わず買ってしまい、むしろマイナスになるかも」。競馬ファンは肝に銘じておいた方が良さそうだ。 (三沢典丈)
*「サブカル」とは、漫画、アニメ、ゲームに代表される「サブカルチャー」の略語。この欄は、沼のように奥深いサブカルの魅力をお届けします。毎月第4火曜日掲載。

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