寝苦しさ 解消して WEBセミナー「夏の夜の眠りの教室 みんなで眠育」

2021年7月27日 09時25分
 寝苦しいこの季節にぴったりのWEBセミナー「夏の夜の眠りの教室 みんなで眠育」(中日新聞・東京新聞生活部主催)が十四日、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って開かれた。約百人の参加者に、講師の睡眠専門医、中山明峰さん(60)は、快眠のキーワードは、体内の熱を逃がす「放熱」と強調。体温をうまく操って脳を徐々に睡眠モードに持っていくことが大切と話した。
 まず説明したのは、皮膚表面の体温より少し高い内臓の体温「深部体温」と、眠りの関係だ=図。深部体温が下がると眠気が強まる。通常は明け方まで下降を続け、その後、目覚めに向けて上昇していくが、寝室の温度が高いと下がりづらくなってしまう。
 眠りは太陽に反応する。夏はただでさえ日が長く、睡眠のリズムが崩れがち。そこで大事なのが寝る前の準備だ。寝る一時間前にはエアコンを入れ、部屋全体を涼しくしておくといい。設定温度は二六〜二八度。冷えすぎると深部体温がぐっと下がって寝ついたころに寒くなるため、途中で切れるようタイマーをかけるのがお勧めという。
 放熱の鍵は、たまった熱が放出される手のひら、足の裏を冷やすこと。夏はおなかに毛布をかけ、手足を外に出すといい。加えて、扇風機で足元に風を送れば、エアコンが切れた後も暑く感じない。体と密着する低反発のマットレスや枕は熱が逃げにくいため、間にござを入れるなど空気の層をつくる工夫が必要だ。
 風呂はリラックスするのに大事な時間。「好みの入り方でいい」が、上昇した体温が下がるには時間が必要だ。シャワーなら浴びて三十分後、ぬるめの湯の場合は出て一時間後、熱めの湯なら一時間半〜二時間後に床に就くといい。
 スマートフォンやパソコンを見ることで入ってくるさまざまな情報は脳を刺激し、眠りを妨げるもとだ。「寝る前はスマホを見ず、寝床にも持ち込まないように」と呼び掛ける。
 もう一つ、酒も睡眠の質を下げる。飲んだ直後は体がリラックスして眠くなるが、三時間ほどすると目が覚めてしまう。アルコールの分解時に発生する「アセトアルデヒド」が眠りを邪魔するためだ。「寝酒ではなく飲むなら早いうちに。依存しない飲み方で」が鉄則という。晩酌の目安はビールなら中瓶一本、日本酒は一合程度という。
 これらの対策に加え、心と体を解き放って眠りに入りやすくするとして紹介したのが「グッパー体操」=イラスト=だ。わざと緊張した状態をつくれば、その後、必ずリラックスできる。手足や頭をへそに向かって曲げて「グー」の形をつくり、続けて一気に伸ばして「パー」の状態に。これを布団に入って何回か繰り返すといい。
 学校がなく、イベントも多い夏休みに向け、「心配なのは子どもの起床・就寝時間の乱れ」と指摘。塾やスマホ、ゲームと、日本の子どもは普段から必要な睡眠時間を確保できず、多くの「睡眠負債」を抱えている状態という。
 子どもの睡眠リズムを保つには、大人が率先して規則正しい生活をすることが重要と強調。「夏こそ、親子で正しい睡眠について学ぶ『眠育』に取り組みましょう」と話し、「Good Sleep, Good Life(良い睡眠は良い人生にいざなう)」と呼び掛けた。
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 睡眠薬が手放せない、子どもが朝起きられない…。当日までに参加者から寄せられた相談は約70件に上った。セミナー後に取材した内容も加え、多かった質問への答えを紹介する。

【質問1】睡眠薬 副作用少ないタイプ、主流に

 「乳がん治療を機に毎日飲まないと眠れなくなった」(石川・四十二歳女性)、「やめられるならやめた方がいいと医師から言われる」(埼玉・七十一歳男性)、「やめたいが、飲まないと不安」(愛知・五十九歳女性)
 飲んでいる薬についてしっかり調べてほしい。不眠治療に使われてきたベンゾジアゼピン(BZ)系の薬は長期服用で薬物依存になりやすい。依存状態の患者が急にやめると、深刻な不眠などの離脱症状に悩まされたりする。また服用を続けると効きにくくなるなどして、より強い不眠や不安に陥る。
 BZ系の適正使用のため、二〇一八年度の診療報酬改定では、医師が一定期間以上処方すると、処方料が減点されるなどの規制がかかった。今は、初診時からBZ系を処方することは減っている。
 近年は、睡眠リズムをつかさどるホルモン「メラトニン」を増やしたり、覚醒に導くホルモン「オレキシン」を抑えたりするタイプの薬の処方が主流だ。BZ系より副作用は格段に少ないが、これらは自然な眠りに誘導する薬。必ず眠れるわけではない。最も大切なことは、何時に寝て何時に起きるといった適切な睡眠計画をつくることだ。

【質問2】起立性調節障害 早く寝る工夫、考えて

 「高三の息子が昨秋から頭痛で朝起きられない。自律神経がうまく働かない起立性調節障害という診断で、頭痛薬や睡眠薬を飲んでいるが治らない」(愛知・五十歳男性)、「中三の息子が昼夜逆転状態」(愛知・四十九歳女性)
 起立性調節障害と診断される子どもの特徴は低血圧だ。しかし、朝起きられないのに、無理に起こして病院に連れて行き、血圧を測れば結果が低血圧になる可能性は高い。血圧を上げる薬を飲んでも解決しないだろう。
 朝起きられる子を目指すのではなく、いかに早く寝かせるかを考えて。ただ、入眠時間を一気に早めようとしても眠れず、不眠が悪化する。例えば、今、午前二時に眠りについているのなら、三十分から一時間早めて徐々に理想の時間に近づけることがポイント。スマートフォンを夜遅くまで見てはいないかなど、腹を割って親子で話し合ってほしい。一番大事なのは、子ども自身の自覚。病院に行く場合は、子どもが納得した上で受診してほしい。

【質問3】睡眠時無呼吸症候群(SAS) 体位の調節を

 「眠っている間に息が止まる。寝る時に機械で鼻から空気を送って気道を広げるCPAP(シーパップ)を使ってみたが、余計に寝られない」(埼玉・七十歳男性)
 成人の無呼吸症候群の場合、治療の第一選択肢はCPAPだ。しかし、CPAPを管理する医師が睡眠の専門でなかったり、使用法の指導が不十分だったりすると、患者は装着を不快に感じることがある。CPAPの患者の半数ほどが、うまく使えずに脱落するといわれる。人によって横向きに寝るなど体位を変えると解消するケースもあるが、その場合も必ず専門医の指導を受けてほしい。

◆講師 睡眠専門医・中山明峰さん

<なかやま・めいほう> 1961年生まれ。愛知医科大大学院修了。専門はめまいと睡眠。名古屋市立大病院睡眠医療センター長などをへて、2021年6月に「めいほう睡眠めまいクリニック」を開院した。健康面コラム「Dr.’sサロン」の執筆者の1人。
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 セミナーは細川暁子、植木創太、河野紀子、熊崎未奈が担当しました。

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