「きょうだい児」甘えていいよ 障害のある兄弟姉妹持つ子 広がる支援活動

2019年11月20日 02時00分

諏方さん(右)やボランティアの女性が見守るなか、ピザづくりを楽しむ子どもたち=横浜市内で

 障害のある兄弟姉妹を持つ子どもを支援する活動が広がっている。「きょうだい児」と呼ばれ、障害児中心の家庭の中で一人で自分の感情を出すことができずに、苦しむ子も少なくない。幼いころからきょうだい児同士で自由に遊んだり、互いの思いを語り合ったりする場を設けるなどして、子どもの状態が改善するケースもあり、事例集をつくって共有する取り組みも始まっている。 (出口有紀)
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 十月中旬、横浜市内のスーパーで「横浜きょうだいの会」の小学生ら九人が楽しそうにピザや焼きそばなどの具材を選び、買い物かごに次々と入れていた。
 どこにでもいる子どもに見えるが、皆、障害のある兄弟姉妹がいる。横浜きょうだいの会は支援団体で、当事者とボランティアらでつくる。この日、子どもたちは自分たちで作ったものを食べた後、近くの公園で水風船を当てっこしたり、腕相撲をしたり、自由な時間を過ごした。
 付き添っていたボランティアの一人で、看護師の小林茜さん(30)=神奈川県平塚市=は「普段、親に『あれ買って』と気軽に言えない子もいる。買い物も貴重な時間」と話す。
 会は二〇〇四年、特別支援学校の教員諏方智広さん(46)=横浜市=が設立。一~二カ月に一度集い、調理のほか、ボウリングやキャンプなどを通じ、参加者やボランティアとのつながりを深める。キャンプではうれしかったことや怒ったこと、困ったことなどを子どもたちが語り合う。
 諏方さんは、大学院時代に障害者支援を研究テーマに選んだことを機にきょうだい児の存在を知った。諏方さんによると、きょうだい児は、障害児の世話に手いっぱいな親の家庭で、自ら我慢を重ねがち。親への怒りや将来への不安などさまざまな思いを抱え、ストレスで不登校になる子もおり、「幼いころからの支援が必要」と感じたという。
 ボランティアの一人、安宅(あたぎ)研治さん(28)=横浜市=も三歳上の兄が自閉症で重度の知的障害があり、葛藤に苦しんだ。「家庭や学校では『兄弟姉妹』としての役割を求められるが、気楽に遊べる場所も必要」
 横浜市の幼稚園職員細谷若菜さん(41)の次男で、発達障害の兄(11)がいる真太郎君(9つ)は小学一年のときから会に通う。細谷さんによると、当初は悲しくても我慢し、泣かない子どもだった。休日は家にこもりがちだったが、会に通ううちに自宅でも感情を素直に出せるようになったという。
 千葉大付属法医学教育研究センター特任講師三平元さん(47)らの研究グループが一八年度に実施した調査では、全国で障害や病気のある子どもの兄弟姉妹を支援する団体は九十二団体。保護者との相談や講演会やシンポジウムの開催、きょうだい児同士の語り合いの場づくり、レクリエーションなどに取り組んでいる。
 国も支援に乗り出している。一五年からは重い病気や障害がある子どもを支える介護者支援事業をつくり、対象に兄弟姉妹を含めた。ただ、行政の担当者には「支援方法が分からない」という声も多く、事業に取り組んでいるのは一八年度三府県と二市にとどまる。
 このため、三平さんらが調査結果をもとにした事例集の策定を計画。「病気や障害のある子が育つ環境をよりよくするためには、介護者である家族や兄弟姉妹の支援も大切。全国どこでもきょうだいを助ける仕組みができるよう、自治体の担当者にはできるものから検討してほしい」と話す。
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 諏方さんは愛知県でも活動しており、参加者を募っている。問い合わせは同会=メールyokohama_tw@yahoo.co.jp

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