東京五輪、トランスジェンダー選手が競技初参加 専門家「男女別の見直しや公平性議論を」

2021年7月28日 06時00分

2018年4月にオーストラリアで行われた重量挙げ大会で試技をするローレル・ハバード(AP)

 東京五輪・パラリンピックには大会史上初めて、トランスジェンダーを公表した選手が自認する性別で出場する。国際オリンピック委員会(IOC)は2004年から、トランスジェンダー選手の参加を一定条件の下に認めているが、特に男性から女性へ性別変更した選手について、公平性を巡って基準の試行錯誤が続く。専門家は「男女区別が根強いスポーツ界で、何をもって公平かを問い直す時期に来ている」と話している。(奥野斐)

◆一定条件

 注目を集めるのは、重量挙げ女子に出場するニュージーランド代表、ローレル・ハバード選手(43)。13年に性別適合手術をしており、8月2日の女子87キロ超級に登場する。
 IOCは15年改定のガイドラインで、女性へ性別変更した選手に関し、性自認の宣言(宣言後4年は変更不可)をした上で、出場前の最低1年間、筋肉量を増強するとされるホルモンの一種「テストステロン」値が一定以下であることなどを条件に女子競技への出場を認めている。ハバード選手も条件を満たして出場する。

トランスジェンダー選手の五輪参加に関するIOCの規定

 フェンシングの元女子日本代表で、現在は男性として生きる杉山文野さんは、五輪へのトランスジェンダー選手の参加を歓迎。日本オリンピック委員会(JOC)理事でもある杉山さん。一部で異議や批判があることに「IOCのルールも更新されてきている。選手個人への批判はあってはならない」と強調した。

◆試行錯誤

 IOCや世界陸連が参加規定を設定した04年には、性別適合手術を受け、性別が法的に承認されているなどの条件もあったが現在は撤廃された。ただ中京大の来田享子教授(五輪史)は「テストステロン値など身体的要因の基準についてはまだ科学的根拠が少なく、試行錯誤が続くかもしれない」と話す。
 今年5月、LGBTなど性的少数者に関する「理解増進」法案を巡り、自民党の山谷えり子参院議員が「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、女子陸上競技に参加してメダルを取るとかばかげたことがいろいろ起きている」と発言。来田さんは「トランスジェンダー選手の存在が不公平という印象があるとすれば、社会の『性別』へのこだわりの強さの裏返しともいえる」と指摘する。

◆より開かれた形

 米国では、女子スポーツにトランスジェンダーの女子生徒が参加することを禁じる州法が可決されるなど、揺り戻しの動きもある。
 そもそも男性中心だった競技スポーツは、「枠外」だった女性が入り、参加を拡大させてきた歴史がある。来田さんは「個々人に適合する、異なる用具を使うことで性を区別せず競技する道を模索する考え方もある」と話し、男女別の見直しや公平性を議論する時期にきているとした。
 スポーツとセクシュアリティー研究が専門の関西大の井谷聡子准教授は「非常に複雑な問題で、ホルモン値が血液量や筋肉量にどれだけ影響するかは個人差も大きく、まだ分からないことも多い」とした上で、「想定されてこなかったトランスジェンダー選手に対し、スポーツはより開かれた形になるか、今はその途上だ」と話した。

関連キーワード

PR情報

社会の新着

記事一覧