<社説>ワクチン証明書 接種しない人に配慮を

2021年7月28日 08時10分
 新型コロナウイルスのワクチン接種を受けた人に発行する証明書(ワクチンパスポート)の申請受け付けが各自治体で始まった。
 政府は海外渡航目的での発行に限っているが、国内での経済活性化に活用したいとの声も上がる。接種を受けない人が排除されない運用方法を検討すべきだ。
 海外では、接種証明書があれば入国時の検査や隔離措置を免除する国がある。ビジネスや留学などで渡航を希望する人にとっては、活動しやすくなる利点がある。
 政府は当面、紙で証明書=写真は書式例=を発行し、いずれはスマートフォンなどで表示できるようデジタル化する方針だという。
 発行は無料で、希望者は住民の接種情報を管理する市区町村の窓口か郵送で申請する。
 現段階ではイタリアやオーストリアなど五カ国が対象で、対象国は順次、増える見通しだ。
 ただ、証明書があっても日本への帰国時には検査や隔離措置は免除されない。他国の証明書を持つ人も同様だ。
 人の動きを活発にしたいなら、感染状況を見極めながら、相互に使えるように利便性を向上する必要がある。
 経済界は消費などの需要を喚起するため、証明書の国内での活用を求めている。落ち込んだ経済の立て直しは急務だ。
 同時に、接種しない人や健康上の理由などで接種できない人への差別につながらないか心配だ。
 接種は個人の判断に委ねられているが、証明書が普及して「接種は当然」との風潮が広がれば、未接種の人が出勤を拒否されたり、店舗や施設の利用を阻まれたりすることが起きかねない。
 接種証明書が感染拡大防止に効果的でも、国内での利用は、検査による陰性証明と併用するなど、接種しない人に十分配慮しつつ慎重に運用すべきだ。政府には、人権に配慮した証明書の活用ガイドラインを示すよう求めたい。
 接種後もマスク着用や手指の消毒など、基本的な感染対策は必要だ。新型コロナ感染が再び拡大する中、政府はいま一度、感染対策の必要性を訴えるべきである。 

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