世の中から求められているのか…岡沢セオンの迷い消した鹿児島・豪雨被害への支援<ボクシング男子ウエルター級>

2021年7月28日 10時50分
 拳に思いを込めた。感謝と恩返し。鹿児島へ届け。

男子ウエルター級2回戦 2回、キューバのロニエル・イグレシアス(左)打ち合う岡沢セオン=27日、両国国技館で(共同)

 東京五輪の男子ウエルター級で、27日の2回戦で敗退した岡沢セオン(INSPA)は、「自分の試合を見て、きょうは少しいい日だったと思ってもらいたい」とリングに上がっていた。

◆1年前の浸水被害

 昨年7月上旬、拠点とする鹿児島県鹿屋市が豪雨による浸水被害を受けた。前夜から雨が降り、「避難してください」と大きな声が聞こえてくる。慌てて外を見ると、自宅の前が増水し、川のようになっていた。
 ジムは床上浸水で電気器具は使用できなくなり、床は反り上がった。ランニングマシンは故障し、思い出のグローブは泥だらけ。
 「ショックというより、『どこから片付けていいのか。どうしよう』と焦りや不安の方が大きかった」

◆「地方の一ジム」復旧に200万円超える寄付

 2週間ほどたった後、復旧支援のため、すがる気持ちでクラウドファンディングを始める。全国203人から208万4280円が集まった。「この地方の一ジムに全国各地から寄付してくれる方がいて、物資も届いて。目に見えない人たちとのつながりを感じたんです」
 それまで岡沢には迷いがあった。なぜ、スポーツをやっているのだろう。世の中から求められているのか。ひょっとしたら、自己満足ではないだろうか。
 だが、岡沢の試合を見て、喜んでくれる人がいた。「私も頑張ろう」と活力になっている。メダルを願う人もいた。自分の役割が身に染みて分かった。

◆「いつかこの負けが」

 スポンサーが約20社つき、4月から「プロ」のアマチュアボクサーになった。
 「コロナ禍や豪雨を乗り越えたからこそ、人に伝えられる、意味のある金メダルになる。あの選手が鹿屋市にいてよかったと思われる選手になりたい」
 岡沢にできることは全力で闘い抜き、結果を残すこと。27日の2回戦、2012年ロンドン五輪を制したキューバの選手と、互角の戦いを演じた。惜しくも敗れたが、「いつかこの負けがあったから、チャンピオンになったと言いたい」。応援してくれる人にメダル獲得の報告はできなかったが、「必ず借りを返せるようにしたい」とこれからの活躍を誓った。(森合正範)

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