鎌倉彫に恋して♡ 地元の高3が職人と交流、写真で魅力伝える

2021年7月28日 12時00分
 鎌倉時代の仏具に起源を持つ工芸品「鎌倉彫」の職人と交流する女子高校生がいる。神奈川県立七里ガ浜高校(鎌倉市)3年の田辺真和まなさん(18)=横浜市戸塚区。街で見つけた鎌倉彫の作品に興味を持ち、展示販売などを行う鎌倉彫工芸館に通うようになった。今は、独特の技法を受け継ぐ職人の手に注目しながら、その魅力を写真で伝える活動にいそしんでいる。(石原真樹)

「私が関心を持ったことで、職人さんが希望を感じてくれればうれしい」と話す田辺さん=いずれも神奈川県鎌倉市で

 鎌倉彫は、カツラなどの木地を成形し、彫刻刀で文様を彫り、漆を塗ったもの。文様以外の部分に文様と調和した刀痕とうこんを残したり、古色がかった落ち着いた色調に仕上げたりするのが特徴だ。800年の間、職人によって木彫りと漆塗りの技術が高められてきた。
 田辺さんが鎌倉彫に魅了されたのは、高校に入学してすぐ。地域を知る授業で鎌倉市内を巡り、店に並べられた鎌倉彫の小皿やお盆を見て「すてきなのがいっぱいある」と関心を持ち、写真集やインターネットで情報を集め始めた。

モダンな雰囲気の鎌倉彫のカップ(田辺真和さん提供)

 2年の秋、鎌倉彫工芸館を訪問。「高校生が魅力を感じてくれるなんて」と歓迎され、週2回、通うようになった。交流するうち、最初は怖い印象だった職人との距離が縮まり、LINEでやりとりするまでに。作品のアイデアを求められ、鎌倉彫とパールビーズを組み合わせたアクセサリーを提案したこともある。
 「1つ1つの工程が、そのやり方でないと味が出ない。丁寧に漆も塗っていて、残すべき文化」と田辺さん。知れば知るほどに愛着が深まり、「貢献したい」との思いが強まった。職人と人々が触れ合うイベントの開催を考えたが、新型コロナで断念。その代わり、写真で職人の魅力を伝えることにした。

何十年も鎌倉彫に向き合い続けてきた職人の手(田辺真和さん提供)

 きちんと勉強したことはないが、どこから撮れば鎌倉彫や職人の魅力が伝わるかを考えながら、スマートフォンやデジカメのレンズを向ける。ある1枚では、彫刻刀で傷つき、しわの間に漆が入った職人の両手を写し出した。田辺さんは、それこそ「宝の源」と考える。「この手が機械では再現できないたくみの技を生み出す」と話す。
 撮影を頼んだ時「汚いのに」と驚いた職人も、「魅力と感じてくれるなら」と応じてくれた。4~5月に撮影した12点を、高校で校医を務める酒井太郎医師(51)の協力で、6月中旬から市内の診療所内のギャラリーで展示している。

本格的に模様を彫る前の皿を持つ職人の手(田辺真和さん提供)

 写真を見られるのは患者だけだが、市内のそば店から「飾りたい」と連絡があるなど評判は上々。いずれ工芸館に展示する予定だ。「鎌倉彫の新しいファンを増やしたい」。ちょっと口べたな職人と社会との懸け橋になるのが目標だ。
 手のモデルになった伝統鎌倉彫事業協同組合の三月みつき一彦理事長(70)は「とても刺激を受けている。彼女を通して、若い人にどんな作品が受けるのか知りたい」と期待している。
 診療所は写真を一般公開せず、問い合わせには応じられない。鎌倉彫や写真の問い合わせは鎌倉彫工芸館=電0467(23)0154、メールinfo@kamakurabori.or.jp=へ。

 鎌倉彫 鎌倉時代に仏具として作られ始め、室町時代以降には茶道具として珍重された。幕末期の廃仏毀釈(きしゃく)運動で、仏師としての仕事は激減したが、その一部が技術を生かし、日用品や土産物の制作として活路を見いだし、今に至る。伝統鎌倉彫事業協同組合によると鎌倉彫の組合は3つあり、加入していない職人もいるため正確な職人の人数は不明だが、200人弱とみられる。

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