16分超の死闘、制したのは執念の指3本 新井千鶴が頂点に立ったカギは準決勝にあり<柔道>

2021年7月28日 22時25分
 東京五輪で28日、女子70キロ級は新井千鶴(三井住友海上)が初出場で金メダルを獲得した。準決勝は16分を超える激戦を制しタイマゾワ(ROC)に一本勝ち。決勝は今年の世界選手権3位のポレレス(オーストリア)に優勢勝ちした。

女子70キロ級 決勝でポレレス(右)を下し初出場で頂点に立った新井千鶴=いずれも日本武道館で

 金メダルをたぐり寄せたのは執念の指3本だった。
 女子70キロ級の新井は優勝を決めた瞬間、まるで花が咲いたかのように笑顔が広がった。「リオ五輪からの5年。振り返れば苦しいことばかり。報われた瞬間です」

◆5月のグランドスラムの借り返す

 壮絶だったのは準決勝。相手は5月のグランドスラム(GS)カザン(ロシア)で敗れたばかりのタイマゾワだった。新井の覚悟が決まる。「これは大会どうこうではなく、リベンジ。絶対に勝ってやる」。決闘だった。

準決勝でタイマゾワ(下)を攻める新井千鶴

 序盤から何度も左内股を仕掛ける。小内刈り、大外刈り。得意の足技も決まらない。腹ばいになる相手に対し、すぐに寝技に持ち込む。しかし、タイマゾワの体は柔らかく、するりと逃げられる。
 
 立ち技になれば投げの応酬。一進一退。意地、執念、誇り。2人の柔道に対する思いが交錯しあう。
 新井が仕掛けた関節技の腕がらみが極まっているように見え、主審が止めた。だが、タイマゾワは「参った」をしていないと首を振っている。試合は続いた。
 リオデジャネイロ五輪は目前で代表から漏れ、スタンドから試合を見つめた。日本武道館で行われた2019年8月の世界選手権は女子でただ一人表彰台に立てなかった。五輪目前で再び代表を逃すのではと悪夢がよぎることもあった。新井にとって、ようやく立てた夢の舞台だ。「絶対に気持ちでは負けない」

準決勝は延長の末、タイマゾワ(右)を絞め技で失神させ勝ち上がった新井千鶴

◆本戦の4倍以上の長期戦

 長期戦にもつれ、次第に腕に力が入らなくなる。本戦4分の4倍以上となる16分すぎ。不完全ながら襟で絞める。本来は5本の指を使って締め上げるが、「3本しか(襟を)持てていなかった」。3本の指に全神経を注ぐ。苦しかった5年分の思いを込めて。相手を失神させる壮絶な幕切れ。16分41秒。死闘を制した。
 「自分の信念をぶらさずにここまでやってきた。しっかり結果がついてきて本当によかった」。夢に見た五輪の畳を堪能し、力を出し切り、表彰台の真ん中に立った。(森合正範)

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