廃校の体育館から世界の頂点に駆け上がった橋本大輝 モットーは「基礎固め」<体操男子個人総合>

2021年7月28日 23時27分

男子個人総合で金メダルを獲得した橋本大輝=有明体操競技場で

 廃校の体育館で体操を始めた少年が世界を制した。東京五輪の体操男子個人総合で28日、金メダルを獲得した橋本大輝(19)=順大。培った美しい体操は、真新しい競技場のスポットライトに映えていた。
 予選トップの選手に許される、試合を締める鉄棒の最終演技。手放し技をしっかり決め、ひねり技も乱れない。着地こそ1歩前にはねたが、ほぼ完璧。得点が表示される前に、新王者の誕生を祝う大きな拍手がわいた。橋本自身も太い上腕を左右に広げ、力強く拳を握る。「涙を流すと、満足したことになる。チャンピオンは常に前だけを見ている」。王者になった瞬間から、きりっとした表情で頼もしい言葉だった。
 千葉県香取市の郊外。水田や林に囲まれた場所に橋本が育った「佐原ジュニア体操クラブ」がある。当時の会員は5、6人。今も10人ほどの小さなクラブだ。

橋本大輝を育てた佐原ジュニア体操クラブの山岸信行監督。練習場所は廃校となった小学校体育館で、跳馬のレーンは室内からはみ出ている=千葉県香取市で

 モットーは基本を固めること。技の練習は抑え、姿勢や基本動作の美しさを重視。山岸信行監督は「難しい技をやろうとしても、減点の方が大きければやる意味がない。技はいつか誰かが教えればできる」と説明する。6歳から通い始めた橋本も、基礎練習を手を抜くことなく黙々と繰り返した。「やりすぎを止めることはあっても、『練習をやれ』と言ったことは一度もない」と山岸監督。橋本自身も、ひたすら倒立を繰り返した日々を覚えている。「僕は倒立が苦手だったから、鏡の前で姿勢を確かめながら」。それこそまさに、伸身姿勢の美しさを世界から評価される今の体操の原点だ。
 地道な努力を続けることの大切さも学んだ。橋本は金メダルの重みについて「積み上げてきたことの重み」と表現した。そして、「これからも変わらない努力で」。前五輪王者の内村航平(ジョイカル)がそうだったように、努力を続け、何年も頂点に君臨するつもりだ。(佐藤航)

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