<お父さんへ 父と娘の14000通>(3)尽きぬ話題

2021年7月29日 07時15分
 二十年間、毎日メール交換をしている父と私。「そんなに書くことある?」と疑問が出るのは当然。LINEで短文を送り合う母娘や恋人はいても、十八で家を出た娘と父が何をそんなに語ることがあるのか?
 ところが、やってみると結構話題はあるものだ。半分日記のように今日あったことを書き送っているだけだが、「何もない一日」というのは案外ない。すごく寒かったり、庭に鳥が来たり、巨人が負けたり。父の一日が手に取るようにわかる。そして私の一日も。
 旅行に行くと「旅日記」を書いて交換するのが決まり。香港ツアーで五十万円のついたてを買った仏壇屋さんにたまげた話。志村けん扮(ふん)する「ひとみばあさん」そっくりの仲居さんがいたボロボロの温泉旅館。客船の浴場で知らないおじいさんに自分のパンツをはかれてしまった話…。父と母の珍道中が私のパソコンにたまっていく。
 以前は実家に電話して父が出ると「…お母さんに代わって」だったが、今は久しぶりに会っても会話に困らない。なにしろこちらは、最近のゴルフのスコアまで知っているのだから。
 特に多い話題はNHKの朝ドラ。戦争中の物語が出てくると、懐かしくて食い付いてくるだろうと話題を振るが、父はちょっと違った。本当にひもじかったので、あまりリアルに描かれると見たくないという。そういうものなのか…。この世代特有の心情も、メール交換で知った。(宮崎美紀子)
      ◇
 父、79歳、兵庫県在住。娘、52歳、神奈川県在住。ひょんなことから、二十年間毎日、互いに七千通超のメールを送り続けた父と娘のコミュニケーション術。

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