“ご近所以上 家族未満” 多世代つながる生活いかが? コロナ禍「コレクティブハウス」に関心

2021年7月29日 07時16分

共有のリビングで、コモンミール後にだんらんする住人たち  =2018年5月撮影、スガモフラット提供  (一部画像処理しています)

 未婚率の上昇や核家族化により、日本の家族形態で今や最も多いのが「単身世帯」。コロナ禍で家に閉じこもり、孤独を感じた人もいるはず。家族以外の誰かと暮らすという選択はどうだろう。多世代が緩やかに共同生活を送る「コレクティブハウス」をのぞいてみた。 (小嶋麻友美)
 東京・JR巣鴨駅近くの十四階建ての店舗兼住宅。二階部分がコレクティブハウス「スガモフラット」だ。元は児童館だったフロアを改築し、二〇〇七年に計十一戸で開設。現在はシングルマザーの親子、単身赴任中の男性などさまざまな八世帯が入居している。
 本格的な厨房(ちゅうぼう)機器がそろう台所とリビングは共有のスペース。ただ場所を共同利用するのではなく、住人全員で暮らしを自主運営する。例えば、大人の住人が持ち回りで食事を作る「コモンミール」。「買い出しから片付けまで一人で、けっこう大変です」と親子三人で住む男性(50)は笑う。
 コロナ下で、コモンミールや顔を合わせるイベントは休止中。それでも、各自で持ち寄った本を静かに読む読書会など、住人同士の接点が失われないよう工夫を重ねる。

コモンミールの様子=2019年12月撮影、スガモフラット提供

 通訳案内士の明美さん(61)=仮名=は、九年前からここに住む。離婚後、一人暮らしをするに当たって、人とのコミュニケーションがある生活を求めていた。雑誌で別のコレクティブハウスを知り、「こんな暮らし方があるんだ」と興味を持ったという。
 住人同士の距離感はご近所以上、家族未満。明美さんにとって、フラットの子どもたちは「自分の家族ではないけれど、よその子とも違う感じ」と言う。
 コモンミールは、誰かと食卓を囲む温かさを教えてくれる。「みんなで食べるのが楽しいのはもちろん、人のために作るごはんには『思い』が入る。自分一人に作る食事とは張り合いが違う」。当分、緩くつながる生活を続けるつもりだ。
 コレクティブハウスは一九七〇年代の北欧で、コミュニティーで子育てや家事を担い合い、男女ともに自分らしく暮らす住まいとして生まれた。日本でも都市の人間関係が希薄になる中、暮らし方を模索する女性たちを中心に広がった。
 スガモフラットなど六棟の運営を支援するNPO「コレクティブハウジング社」(東京都町田市)によると、コロナ禍で共同生活に関心が高まりつつあるという。理事の狩野(かりの)三枝さんは「隣人と日常を協働することで自然に信頼関係が生まれ、安心できて人間らしい暮らしを取り戻すことにつながる」と話す。

◆女性が熱視線 建設に課題も

 東京都は特に単身者が多く、単身世帯が全世帯の約半分を占める。このうち六十五歳以上の高齢者は、二〇三五年に計百万人に迫る見込みだ。特に、男性より長生きする女性にとって、一人暮らしはひと事ではない。
 現在は夫、子どもと住むアロマセラピストの嵯峨慈子さん(48)も「女性の老後の暮らし」に関心を寄せる一人。「今は家族がいても、将来一人になった時にどうするか、みんな自分事として考えている」と話す。嵯峨さんらは昨年度、都の地域支援事業で実践研究を行い、女性たちの本音や理想を探った。
 三十〜八十代の女性約百四十人に行ったアンケートでは、九割以上が他人とつながりを持つ暮らし方に関心があると回答。コレクティブハウスのような台所やリビングの共有に肯定的な人も四割近くいた。共同生活でやりたいことでは、家事や通院といった生活上の助け合いや散歩、ガーデニングなどが多かった。
 嵯峨さん自身、留学でルームシェアを経験し、共同生活には抵抗感がないという。コミュニティー型の住まいはまだ少なく、建設するにも都内の地代が高いなどハード面の課題は多いが、「まずは人とのネットワークをつくっておくことも大切」と話している。

関連キーワード

PR情報