遅咲きの30歳、浜田尚里が金メダル 「あり地獄」の寝技で頂点に<柔道女子78キロ級>

2021年7月29日 18時34分
 柔道女子78キロ級で、五輪初出場の浜田尚里はまだしょうり(自衛隊)が決勝でマドレーヌ・マロンガ(フランス)に崩れ上四方固めで一本勝ちし、金メダルを獲得した。28日の70キロ級で優勝した新井千鶴(三井住友海上)に続き、日本女子勢は2日連続の金メダル。
 女子78キロ級では、2004年アテネ大会で阿武教子が優勝したのを最後に、日本勢はメダル獲得を逃していた。

女子78キロ級で優勝し、笑顔を見せる浜田尚里(右)=日本武道館で

◆寝技でオール一本勝ち 独自のスタイル貫く

 一度寝技になったら抜け出せない。対戦相手からすれば「あり地獄」。女子78キロ級の浜田は4試合寝技でオール一本勝ち。圧倒的な強さで金メダルを手にした。「一戦一戦集中して闘った。得意の寝技が出せてよかった」
 初戦から抑え込み、絞め技、関節技で勝ち上がり、迎えた決勝。過去2勝4敗のマロンガと向かい合う。長身で立ち技の威力がある相手にどうやってわなを仕掛け、寝技に持ち込むか。相手が投げにきたところをつぶした。「狙っていた」。絶対に逃がさない。寝技に引き込むと、得意の帯取り返し。がっちりと抑え込んだ。
 鹿児島南高入学時は目立つ選手ではなかった。当時指導した吉村智之さんは「正直弱かった。でも、一つのことを始めたら『大丈夫か』というくらいやり続けていた」と回想する。それが寝技だった。
 部室にあった元世界選手権覇者、柏崎克彦さんの技術書「寝技で勝つ柔道」を読み込んだ。何度も練習で繰り返す。乾いたスポンジのようにどんどん吸収していく。吉村さんは言った。「センスは生まれながらのものだと思っていたが、浜田を見るとそうではない。努力でセンスは磨けると分かった」
 柏崎さんは浜田の試合を見るたびに思う。「これ、俺の寝技だわ。最初から最後まで、ものすごく似ている」。本人からそう思われるほど、反復練習をやり込み、独特のスタイルを築き上げた。
 柔道の華は担ぎ技や足技による豪快な一本勝ち。寝技は地味に映るかもしれない。だが、「あり地獄」から必死に抜けだそうとする相手。是が非でも仕留めようとする浜田。その攻防はスリルがあり、技には一撃の破壊力がある。浜田にしか表現できない柔道の魅力といえるだろう。
 寝技に活路を見いだし、本気で五輪を目指したのは世界選手権代表になった28歳から。初の五輪。30歳10カ月。「まだまだ技術は…。もっと強くなれると思う」。遅咲きの個性派金メダリストが誕生した。(森合正範)

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