柔道“3冠”のウルフ・アロン「歴史に名を刻めた」 男子100キロ級で日本勢21年ぶり金メダル

2021年7月29日 19時40分
 柔道の男子100キロ級で、五輪初出場のウルフ・アロン(了徳寺大学職)が決勝で延長の末に、趙グハム(韓国)に大内刈りで一本勝ちし、金メダルを獲得した。今大会の日本男子勢では5個目の金メダルとなった。
 男子100キロ級は男子日本代表の井上康生監督が2000年シドニー大会で優勝したが、その後の4大会では頂点に届くことができなかった。

男子100キロ級決勝 韓国の趙グハム(左)に一本勝ちし、金メダルを獲得したウルフ・アロン=日本武道館で

◆持久戦の末に「苦手なタイプ」の趙を撃破

 パワー、スタミナ、スピード。全てを求められる男子100キロ級。ウルフはそれらに緻密さを加えた。「接戦になればなるほど僕自身の持ち味が出てくる。自分を信じて闘った。目標の五輪で優勝できてうれしい」。同階級の日本勢ではシドニー五輪の井上康生以来となる21年ぶりに金メダルを獲得した。
 決勝の相手は2019年世界選手権で敗れ、「苦手なタイプ」という趙グハム。これまでは押す柔道で担ぎ技を食らってきた。この日は一転、重心を低くした体勢で、片手でも相手の道着をつかんだら技をかける。少しずつ相手の体力を削っていく。持久戦に持ち込み、趙グハムが肩で息をし、「疲れているな」と感じた9分30秒すぎ、豪快な大内刈りで一本を奪った。
 18年に左膝、翌19年には右膝。2度の手術を乗り越えた。だが、両脚ともに半月板はすり減ったまま。膝を曲げると「カキ、カキ」と音が鳴る。苦しさと焦り。「正直、膝はよくない状態が続いていた」。そんなときに思い出すのは「夢は大きく目標は身近に」。競技を始めた頃、東京・春日柔道クラブでよく言われた教え。身近なこと、日々できることをやろう。前日に痛み止めを打ち、状態が悪いながら、できる限りコンディションを整え、試合に臨んだ。
 17年世界選手権を制し、19年は全日本選手権で優勝。残りの勲章は五輪の金メダルだけだった。数日前、井上監督から「おまえ、3冠を狙える位置にいるんだな」と冷やかされた。日本人柔道家の栄誉とされる「3冠」は史上8人目。「歴史に名を刻むことができた。これで今までの努力が報われた。井上監督のような柔道家として、一人の人間として立派な人になりたい」
 試合後、井上監督は「自分と直接対決したらどうなるかと思うくらい、素晴らしい選手」と褒めたたえた。ウルフが受け継ぐ系譜。「いやいや(当時と)ルールが違いますから。僕は組まないですよ」と笑い、胸に輝く金メダルをそっと見つめた。(森合正範)

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