炎天下で「体はボロボロ」 五輪警備員が語る過酷な長時間労働 「国の一大事業」圧力に?

2021年7月30日 06時00分
 新型コロナウイルス禍の緊急事態宣言下で開催されている東京五輪。その会場で、民間警備員が過酷な労働環境の改善を求めている。長時間労働に猛暑が加わり、健康リスクは高まる一方だ。建設工事でも労働問題が相次いだ五輪。現場にしわ寄せがいく背景に、何があるのか。(木原育子、中山岳)

◆賃金説明もなく、丸2日連続勤務も

 東京五輪の警備について語る男性

 「どんな賃金体系になるかの説明もないまま、五輪の警備に突入した。疲れてボロボロですよ」。40代の男性警備員が、東京都内の五輪会場での経験を話した。会場に出入りする車や人の誘導を担当。炎天下で立ち続け、顔や腕は赤黒く日焼けした。
 連日30度を超す猛暑で、特にアスファルト上の体感温度はそれをはるかに超える。だが、大会組織委員会から支給される制服は空調装備も付いていない。ただでさえマスクを着けているため呼吸しづらく、ぬらしたハンカチを首に巻いている人もいる。
 日なたの担当になったら、水分補給以外に暑さ対策はない。仲間内で時間を決めて交代で休んでしのいだが、「疲れは取れなかった」という。
 つらいのは、人手不足で、決められた勤務時間以外にも追加業務を求められることだ。他の従業員に迷惑がかかるなどとされ、丸1日半、丸2日と連続で働く人もいる。休憩所はあるが、横になって寝ることはできず、短い休憩時間に座ったまま仮眠するしかない。「五輪期間中に追加で働いた際の賃金の説明も受けていない。断れる性格の人はまだいいが、断りきれず働かされ続けている人もいる」

◆PCR検査なく「不安しかない」

 追い打ちをかけるのが、新型コロナウイルス感染者数の増加。五輪選手には頻繁にPCR検査が実施されるが、警備員にはない。ワクチンを打ちにいく時間もなく、男性は「不安しかない」と言葉少なだ。
 全国から集められた警察官と別に、競技会場や選手村などに配置されている警備員。無観客開催で屋内の仕事が減る一方、交通誘導などは必要な人数がさほど変わらないとされる。関東地方の会場を担当する警備会社の社長は「競技会場によって、警備の負担に差が出ていることは考えられる」と話す。

東京体育館前に設置された暑さ指数を示すボード=東京都渋谷区で

 長時間労働に暑さが加わったとき、心配なのが熱中症だ。東京労働局によると、昨年、職場での熱中症による死傷者は77人を数えた。業種別では、建設業などとともに警備業が多い。寺門健一・主任労働衛生専門官は「五輪でも警備業で熱中症が多発する恐れがあり、事前に対策会議も開いた。引き続き予防対策を徹底していく」と話す。

◆大会時の気温「東京だけ高いわけではない」

 日本労働弁護団の嶋崎量弁護士も「世界的、国家的なイベント。開幕直前までこれだけバタバタしたので、過酷な労働環境下で働かされている人が出てきてもおかしくない」と懸念している。
 組織委は取材に対し、警備員の長時間労働について「適正な業務割り当てを行った上で適宜休憩時間を挟むなど長時間の労働にならないようシフトを組むなど、法令に則った必要な対応をしている」と回答。暑さ対策に関しては「過去の大会と比べて8月の気温は東京だけが必ずしも高いわけではない。日射の遮蔽と冷却を実施する」などとする指針を示した。
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