ふたりのももたろう 定番&鬼に育てられる物語1冊に 物事の二面性 異なる立場から

2021年7月30日 06時30分
 むかしむかしあるところに、桃から生まれた桃太郎が…もう一人いたとしたら!? 物事の二面性を知り、自分と異なる立場から考えるきっかけにしてもらおうと、昔話「桃太郎」のもう一つの物語を描いた絵本「ふたりのももたろう」=写真=が八月に発刊される。異業種の会社で初めて出版を手掛けた木戸優起(ゆうき)さん(36)に、絵本に託す思いを聞いた。
 「ふたりのももたろう」と書かれた本を開くと、次に出てくる表紙は「おにたいじのももたろう」。おばあさんが川で拾った桃から生まれ、人々を困らせる鬼を鬼ケ島まで退治しに行く、おなじみの桃太郎だ。

こちらはご存じ「おにたいじ」編

 次に、裏表紙をぐるりと回転させると、もう一つの物語「おにのこももたろう」が現れる。物事に二面性があるように、ひっくり返すと別の絵本になる蛇腹状のユニークな仕掛けになっている。

二つの物語が描かれた絵本「ふたりのももたろう」は蛇腹構造となっている

 おばあさんが川で桃を拾い家に帰ったその時、もう一つの桃が流れてきた。誰にも拾われず、島に流れ着いた桃から生まれた「桃太郎」は、その島に住む鬼に育てられる。ある日、桃太郎は自分には鬼のような角がなく「仲間外れだ」と泣くが、鬼たちは「違っていてもいいじゃないか」と話す。

こっちから読めば「おにのこ」編

 発刊したのは、ビジネスで社会課題の解決を図る千代田区の会社「ドリームインキュベータ」。木戸さんは紙の専門商社にいたころから絵本という形で何かを伝えたいと考えていた。二年前に同社へ転職後、多様な価値観に気づく情報を発信するプロジェクト「#たしかに」に加わり、絵本づくりの夢を実現した。もう一つの物語の創作、執筆は木戸さん。イラストは、インスタグラムでイメージに合う絵を公開しているイラストレーターを探して依頼した。

◆2人の桃太郎最後は…今、答えなき時代 考える力を持って!

 「昔話は語り継がれるが、時代に合わなくもなっている」と題材に選んだ。退治される鬼の子どもの物語なども考えたが「どちらが善い、悪いの二項対立になってしまう」と、それぞれの環境ですくすくと育った二人の桃太郎を主人公にした。二人の人生が変わったのは、桃が川で拾われたかどうか。「ちょっとしたきっかけで違いは生まれる。『自分はもしかしたら相手だったかも』と、相手の立場に立ちやすくなる」

絵本「ふたりのももたろう」発起人の木戸優起さん=千代田区で

 そもそも桃太郎の物語は伝説やおとぎ話によって諸説あり、なぜ鬼退治に行ったのか、木戸さんは子どものころよく分からなかったという。そのため自分なりの解釈で「おじいさんとおばあさんは僕が守らなきゃ」と桃太郎が決意し、鬼退治のために修行に励む場面も加えた。
 制作段階の絵本を未就学児に読み聞かせてもらったり、小学生に読んでもらったりすると好評だった。鬼に育てられた桃太郎の話を読んだ子は「どうしたら鬼を守れるだろう」「鬼の島にみんなに住んでもらおう」などと考え始めたという。
 なお、鬼に育てられた桃太郎は最後、鬼退治に来た桃太郎と出会う。するとどうなるのか? 木戸さんは「今、答えを出すのが難しい時代になっている。こうした時にどうするのか、考える力を持ってほしい」と話している。
 絵本は八月十一日発刊。税込み千九百八十円。全国の書店やインターネット書店で販売する。他の昔話での続刊も考えているという。
 文・神谷円香/写真・伊藤遼
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