<社説>真夏の五輪 拝金主義を見直さねば

2021年7月30日 07時01分

汗をぬぐうジョコビッチ選手=24日 (AP・共同)

 東京の猛暑に五輪選手から悲鳴が上がり、テニスでは競技開始時間の変更が決まった。真夏の開催は、巨額の放映権料を負担する米メディアの意向とされる。国際オリンピック委員会(IOC)の根底にある「拝金主義」を見直さなければならない。
 東京の最高気温は連日のように三〇度を超え、湿度も高い。懸念通りの蒸し暑さだ。
 テニス競技では、スペインの女子選手が体調不良で試合途中に棄権。男子選手から開始時間を変更するよう提案があり、当初の「午前十一時」から「午後三時」に遅らせることになった。
 アーチェリーでもロシア・オリンピック委員会の女子選手が競技後に倒れ、スケートボードでは米国の男子選手が暑さでボードが曲がると明かした。
 真夏の野外競技は危険が伴うにもかかわらず、東京都は招致活動時、この時期を「晴れる日が多く温暖」「アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候」とPRしていた。
 無責任極まりない虚言だ。無観客でなければ、観戦中や入場時の行列で何人が倒れただろう。
 真夏の開催は、IOCの収入の約七割を負担する米テレビ局の意向とされる。米国では秋に、大リーグのワールドシリーズやプロバスケットボールNBAの開幕などがある。時期が重なるのを避けるため、五輪を真夏にしか開催できないとしたら「アスリート・ファースト」ではなく「テレビ・ファースト」。本末転倒だ。
 気候変動で北半球の多くの大都市は七、八月に熱波に襲われる懸念がある。開催時期を柔軟に決められるよう、IOCはテレビ局への過度の依存を改めるべきだ。
 日本側は暑さの問題で小手先の対応に終始した。遮熱性舗装やミストシャワーなどに巨費を投じたが、マラソンと競歩の札幌移転はIOC主導。日本側が主体的に会場変更を提起すべきだった。
 五輪後にはパラリンピックが控える。車いすの選手には頸髄(けいずい)損傷などで体温調整機能を失い、暑さが致命的になる人もいる。対策に万全を期さねばならない。

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