被爆した瓶モチーフ 記憶を語り継ぐアート きょうから神宮前で作品展

2021年7月30日 07時12分

熱風で変形した瓶を忠実に再現した作品

 8月9日、長崎県に原子爆弾が投下され今年で76年になる。一瞬で多くの命を奪った記憶を語り継ぐアートとして、長崎市出身のデザイナー毎熊那々恵さん(31)=世田谷区=が、熱風で変形した瓶を忠実に再現した。「祈りの花瓶展2021」として、30日から渋谷区のギャラリーで展示する。(山下葉月)
 個展は今年で三回目。長崎原爆資料館の協力を得て、被爆した瓶三点を3Dスキャンし、アクリル樹脂素材で再現した作品が紹介されている。熱風でねじまがった形、表面にこびり付いた土やあせた色まで精密に作り込んだ。
 毎熊さんは「手に取って、原爆の衝撃を考えてほしい」と願う。
 毎熊さんは被爆三世。爆心地から約五キロの市街地にいた祖母の被爆体験を幼少期から耳にしてきた。原爆でなくなった人を、井桁に組んで火葬していたことや、残された人々が苦しみながら生きていたこと−。「戦争はぜったいダメ、なんも良かことは無かよ」。聞くことがつらいこともあったが、祖母が繰り返すこの言葉が心にずっと残っていた。
 契機は二〇一六年。都内のデザイン学校への進学で上京して以来、広島と長崎に原爆が投下された夏の時期に身の回りで原爆について話題にならないことに違和感があった。風化に危機感を覚え、「自分にしかできないこと」を考えた時、卒業制作で故郷の原爆投下や平和をテーマにした。

熱風で変形した瓶を忠実に再現した「祈りの花瓶」は、会場で展示販売する(毎熊さん提供)

 会場では、長崎の陶磁器で再現した花瓶約五十個も展示販売されている。毎熊さんは「長崎の人々は生活の中に戦争の記憶がある。花瓶など日常使いできるものから、戦争を考えるきっかけが生まれれば」と話す。
 新型コロナの感染拡大で開催に迷いもあったが「今だからこそやらないといけない。戦争や原爆投下の記憶がさらに風化してしまうから」。
 展示会は来月十日までで、午前十一時〜午後七時。九日のみ午前十時半から開場し、午前十一時二分に黙とうを行う。会場はポピュラリティー(渋谷区神宮前二)、問い合わせは毎熊さんのメール=contact@vtp.jp=へ。

「祈りの花瓶展2021」を開く毎熊那々恵さん=港区で

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