モニュメントできたけど…「五輪に賛成言えない」 札幌、歓迎ムードからほど遠く<ルポ コロナ禍のオリンピック>

2021年7月30日 12時00分
お目見えした巨大モニュメント。市中心部を通るマラソンコース沿いに設置された=札幌市の大通公園

お目見えした巨大モニュメント。市中心部を通るマラソンコース沿いに設置された=札幌市の大通公園

 酷暑を避けるため東京五輪の開催都市、東京から約830キロ離れ、マラソンや競歩が行われる札幌市。大通公園には、「初の夏季五輪」を祝う5つの輪の巨大モニュメントが登場したが、新型コロナウイルスの感染急増で、見つめる市民の胸中は複雑だ。五輪中止の旗を掲げる姿もあり、歓迎ムードには程遠い。(前口憲幸)

◆医療逼迫の懸念

 「マラソンの大ファンで応援したい。でも口に出せない」。ジョギング中にモニュメントの写真を撮った40代女性が声を潜めた。職業は看護師。北海道内でも感染力が強いデルタ株への置き換わりが急速に進んでおり、「医療逼迫ひっぱくへの懸念は肌で感じている。五輪に賛成なんて、職場では絶対に言えない」。
 モニュメントは高さ3・5メートル、幅5・5メートル。市が制作費875万円をかけ、19日に設置した。ただ、沿道での観戦自粛を理由に、担当者は「PRの垂れ幕や旗も最低限の数」と説明する。「本来なら夏の札幌を世界に発信するまたとない機会だが、五輪を巡り、さまざまな意見が寄せられている。動きにくい面がある」と複雑な胸中を明かす。

◆冬季五輪の誘致

 「何が五輪だ 中止だ 中止!」。地元の弁護士田中健太郎さん(47)は、そう手書きした小旗を胸に当て、モニュメントの前に立った。「開幕したとたん、メディアが盛り上げる。選手の思いは分かるけど、苦しんでいる人が大勢いる現状がある」
 田中さんは、政府分科会の尾身茂会長が「普通は(開催は)ない」と言及した経緯を踏まえ、「IOC(国際オリンピック委員会)にも為政者にも全く声が届かない。開催国には負担と混乱が重くのしかかるばかりだ」と訴えた。
 北海学園大(札幌市)の鹿谷雄一准教授(地方自治論)は、2030年冬季五輪の招致に動いている市の実情に触れ、「IOCとの関係強化への思惑が、コロナ禍で不透明になった」と指摘する。
 「猛暑の東京開催に批判が集まり、転がり込んできたマラソンと競歩。道も市も何とか成功させ、冬季五輪の実現につなげたい思惑があるが、コロナ禍の逆風に振り回されている」と解説した。

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