地方の駅弁が東京進出…販路開拓の「旅」に コロナ禍「旅行気分味わえる」<まちビズ最前線>

2021年8月1日 05時50分
 
 地方の駅弁業者が、東京都内に相次いで進出している。コロナ禍の旅行控えで売り上げが減り、人口の多い東京で販路開拓を目指す。都道府県をまたぐ移動や外食が制限される中、持ち帰りした駅弁で旅行気分を味わってみてはいかが?(大島宏一郎)

名物「峠の釜めし」などを販売する「荻野屋 弦」=東京・有楽町で

◆「すぐに買えてうれしい」

 陶器の釜を器にした、多彩な具材の炊き込みごはんの駅弁「峠の釜めし」。JR横川駅(群馬県安中市)の名物として、長年親しまれている。製造販売する「荻野屋」(同)は3月下旬、JR有楽町駅近くに新店舗「荻野屋 げん」を開き、峠の釜めし(1100円)をテークアウトで販売している。釜めしを購入した40代のパート女性は「たまにしか食べられない駅弁が、すぐに買えてうれしい」と喜んだ。
 荻野屋は、群馬県内の駅構内のほか、幹線道路沿いでも駅弁の販売店を運営している。しかし、コロナ禍でバスツアーも中止が相次ぎ、2020年の地元での売上高は前年の8割減に落ち込んだ。高見澤志和社長(44)は「(観光客を)待っていても苦境は変わらない。お客さんの多い場所に出て、現状打破につなげたい」と意気込む。

伊勢丹新宿店に常設店を開いた駅弁業者の丸政=新宿区で

 山梨県北杜市の駅弁業者「丸政」は昨夏、伊勢丹新宿店に常設店を開いた。JR小淵沢駅で人気の「元気甲斐」(1780円)を販売している。丸政の桜井剛敏・生産管理部長(44)は「地元の駅での売上高は例年の3割ほど。都内での販売が全体を押し上げた」と手応えを感じている。

◆コロナ禍が追い打ちに

 鹿児島県出水市の駅弁業者「松栄軒」も今年5月から、京王百貨店新宿店に出品。駅弁を買った人からは「旅行気分を味わえる」と好評という。松山幸右社長(47)は「九州の食文化を発信するいい機会になっている」と話す。
 全国の駅弁業者でつくる「日本鉄道構内営業中央会」によると、会員数はピークの1967年には400社を超えていた。しかし、自動車の普及や鉄道の高速化などの影響で、今では86社(4月1日現在)まで減った。
 厳しい経営環境の中、コロナ禍が追い打ちをかける。中央会の松橋信広事務局長は「中小が多い駅弁業者の打撃は大きい」と指摘。その上で「感染拡大で経済活動が制限される東京はリスクもあるが、人口の多い商圏で販路を開拓しておけば、コロナ後に需要の反動増が期待できる」と話す。

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