新型原子炉「高温ガス炉」が10年半ぶりに運転再開 水素製造で原子力温存狙いも

2021年7月30日 19時30分
 日本原子力研究開発機構は30日、大洗研究所(茨城県大洗町)の高温ガス炉の実験炉「高温工学試験研究炉(HTTR、熱出力3万キロワット)」を10年半ぶりに運転再開した。

10年半ぶりに運転再開したHTTR。現在は発電や水素製造の施設はないが、実用化に向けた研究に備え建設用地は確保している=7月30日、茨城県大洗町で

 高温ガス炉は通常の原子力発電所(軽水炉)とは異なり、冷却材に水ではなく、ヘリウムガスを使う。より高温の熱を取り出すことができ、これをガスタービン発電や水素製造など多目的に利用する構想だ。
 政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」は、新型炉開発の柱として高温ガス炉を重視するが、「原発の再稼働や新増設が行き詰まる中で、クリーンエネルギーのイメージがある水素を隠れみのにして、原子力ムラを温存する動き」(上岡直見・環境経済研究所代表)との批判もある。

制御棒を引き抜く操作を行う運転員ら(代表撮影)=7月30日、茨城県大洗町で

 午前11時すぎ、中央制御室で運転員が制御棒を引き抜く操作を開始。午後2時40分に臨界に達した。運転しながら原子炉の性能を順次チェックし、9月末にフル稼働の状態で最終検査を実施。来年1月から、トラブルを想定した安全性実証試験に入る計画だ。
 経済産業省が昨年12月に発表した「グリーン成長戦略」は、HTTRで30年までに水素製造の基本技術を確立するとする。原子力機構によると、東京電力福島第一原発事故のような炉心溶融や水素爆発は原理的に起こらない設計になっているという。
 根岸仁所長は報道陣に「福島以降、原子力に対して厳しい情勢があるのは認識しているが、安全性が非常に高いことも周知しながら、ご理解いただくように努力したい」と話した。
 HTTRは1998年に初臨界。11年1月を最後に運転していない。原子力規制委員会は昨年6月、地震・津波対策などが新規制基準に適合していると判断した。(宮尾幹成)

関連キーワード

PR情報

茨城の新着

記事一覧