楽観論目立つ首相の発信 「人流抑制は事実」と言うが・・・ 政府の発信に「失敗」の指摘

2021年7月30日 21時37分
 菅義偉首相は30日夜、新型コロナウイルス緊急事態宣言の対象地域拡大決定後、記者会見した。東京五輪開催は新規感染者の急増の「原因になっていないと思っている」と、関係を否定した。若年層の感染者増など「強く憂慮すべきことがある」としながらも、高齢者のワクチン接種が進んでいることを強調した。これらの楽観的なメッセージが、国民の警戒感を緩める結果となっているという意識は希薄なままだ。(井上峻輔、上野実輝彦)
 首相は会見で、重症者数や病床利用率の増加は抑制的だと指摘して「ワクチン接種の効果が顕著に表れている」と強調した。8月下旬には2回接種を終えた人が全国民の4割を超えるよう取り組むと説明した。

◆「人流減は事実」か?

 東京で発令され続けてきた緊急事態宣言などによって「人流が減少していることは事実だ」とも話し、中止論が根強い五輪開催に理解を求めた。
 しかし、人出に関しては、厚生労働省に助言する専門家組織「アドバイザリーボード」の公表資料によると、東京の繁華街の人出は前回の緊急事態宣言時だった5月は約40%減ったが、7月は約16%減にとどまる。都の資料でも、コロナ重症者は60代以上では減る一方で、50代以下は増加している。
 西村康稔経済再生担当相は30日、衆院議院運営委員会で「五輪で感動した高揚感のまま外出し、感染防止策を怠ると若い世代に(感染が)広がる」と認めた。

◆停滞気味のワクチン、供給量限られる治療薬

 首相が感染抑止の頼みの綱とするのは、ワクチン接種と治療薬。記者会見でも、特に軽症者や中等症患者向けの「抗体カクテル療法」を「画期的な治療薬」と強調し、「政府として十分な量を確保している」と語った。だが、ワクチン接種は供給不足から停滞気味。カクテル療法も供給量は限られ、当面の投与は基礎疾患など重症化リスクのある入院患者に限られる。

◆「政府はコミュニケーションに失敗している」

 加えて、緊急事態宣言下で、国民に不要不急の外出などの自粛を求めながら五輪を開くという、ちぐはぐなメッセージが、コロナ対策に国民の協力を得ることをより難しくしている。政府の基本的対処方針分科会メンバーで東大医科学研究所の武藤香織教授は30日、記者団に「政府はコミュニケーションに失敗している」と指摘した。
 首相は会見で「現在、国民の生命と健康が守られているか」と尋ねられると明確には答えず、医療崩壊が起きた場合に辞任する覚悟があるかとの問いには「感染対策にしっかりと対応することが私の責任で、私はできると思う」と明言した。

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