菅首相、開催基準示さぬまま五輪に突入した責任に言及せず 本紙の質問はぐらかし続ける

2021年7月30日 23時39分
<民なくして 2021年夏>
 菅義偉首相は30日の記者会見で、東京五輪を中止しない考えをあらためて示した。だが、本紙が開幕前の4月以降、首相の会見で繰り返し質問した感染拡大につながるリスクへの認識や、開催の可否を判断する基準は一度も正面から説明していない。国民の不安と疑問に向き合わず、感染拡大を抑えることもできず、自ら「異例」と認める緊急事態宣言下の五輪に突入した責任にも言及しないままだ。(木谷孝洋)

◆科学的根拠なく「安全・安心」繰り返す

 首相は30日の会見で「東京五輪・パラリンピックを予定通り開催するか」と問われ「自宅でテレビ観戦してもらえるようにしていきたい」と答えた。
 本紙が質問した4月以降の首相会見で浮かび上がったのは、科学的な根拠や基準を示さず「安全・安心な大会を実現する」と繰り返す首相の説明姿勢だ。

◆論点ずらし責任回避

 4月23日の会見で「国民の命を守ることより五輪が優先されていないか」と指摘し、開催を判断する際のコロナ感染状況の基準を示すよう求めた。首相は「IOC(国際オリンピック委員会)が開催の権限を持っている」とかわし「安全・安心な大会にするために東京都、組織委員会、政府でさまざまな対応を取っている」と強調。具体策で触れたのは、海外からの観客受け入れを見送る従来の方針だけだった。
 本紙は5月14日に再度、開催基準を設けて判断すべきだと投げかけた。首相は「感染拡大を食い止め、国民の命と健康を守ることが最優先だ」と答え、ワクチン接種の加速や入国する大会関係者の絞り込みなどの対策を並べただけ。基準には触れずに、またも「安全・安心の大会実現は可能」と言い切った。
 緊急事態宣言中の同28日には、宣言下で五輪の開催は可能かと質問。IOCのコーツ調整委員長が「もちろんイエスだ」と明言していたためだが、首相は直接答えず「当面は宣言を解除できるようにしたい」と論点をずらした。
 にもかかわらず、東京に4度目の宣言を発令することを表明した7月8日の会見では、冒頭に「宣言の下で異例の(五輪)開催となった」と発言。宣言の有無に関係なく「五輪ありき」だったことを事実上認めた。五輪開幕後の27日には、東京都の新規感染者数が過去最多の2800人超に達し、官邸で記者団が「中止の選択肢はないのか」と問うと「ない」と明言している。

◆上西教授「メディアは責任問題を指摘し続けて」

 安倍政権時代、閣僚らが意図的に論点をずらしたり、すり替えて答えていると批判した法政大の上西充子教授は、首相の説明について「五輪に関する疑問点に一切答えず、言質を与えない姿勢に徹している。五輪に関する責任が大きいが故に、その責任を回避しようとしている」と指摘。「日本選手のメダル獲得が続けば世論も沸き立つと考えているのだろうが、メディアは首相の責任回避について問題点を指摘し続けるべきだ」と話す。
 

首相会見での本紙の質問機会 首相の記者会見は、各社が持ち回りで務める内閣記者会の幹事社が質問した後、司会の内閣広報官が挙手した記者の中から質問者を指名して進行する。本紙は昨年9月の菅政権発足以降、9回連続で指名されなかったが、4月5日朝刊「民主主義のあした」で事実を指摘すると、次の会見の場となった23日に初めて指名された。5、6月は幹事社として計4回質問。7月8日と30日は指名されなかったため、書面で質問した。

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