女の子だから、男の子だからをなくす本 ソ・ハンソル監修、ユン・ウンジュ著、イ・へジョン絵

2021年8月1日 07時00分

◆見えづらい弱さを知って
[評]太田啓子(弁護士)

 「女らしく」なくていい、「男らしさ」に縛られないで。あなたを型にはめ可能性を狭めようとする呪いにかからないで。そういうメッセージは、(十分とは思わないが)既に各所で発せられていると思う。本書も子どもを読者と想定した易(やさ)しい文体で力強くそれを訴える。「『かわいい』は言わせない」「あなたの体をありのまま好きになろう」「どうどうとこわがってもいい」「傷ついたと伝えよう」などの言葉に励まされ、背中を押される読者は年代問わず多いだろう。しかし本書の真骨頂は次の点だと評者は考える。
 「男の子たちへ」として二つの重要な指摘をする。一つ目は、性差別構造においては男の子には見えづらいものがある、とマジョリティとしての認識を促す点である。「明るいところにいると、くらいところはよく見えない。反対に、くらいところからは明るいところがよく見える。明るくて、大きくて、強いがわに立っていると、くらくて、小さくて、弱いほうがどんなことになっているか見えづらいんだ」という文章に添えられたイラストは、高さに傾斜があるサッカーグラウンド。世の中は実はあらかじめ不公平。あなたには見えづらいものがあることを知ろう、というメッセージを心得ている大人はどれだけいるだろうか。
 二つ目は「パパを変えよう」。パパが「男はもともと〇〇だから」と言うのはパパの子ども時代の教育のためだろうしあなたのためを思って言うんだろうね、と理解を示しつつ「手おくれになる前に、パパがかっこいいおとなになれるよう、たすけてあげて」。旧時代の性差別的価値観が根付いてしまった親が、自分の子どもの振る舞いをきっかけに意識をアップデートしようとすることがあれば本当に素晴らしいことだ。性差別を無くそうと動き出すきっかけは身近な人の、時には自分の子どもの、自分に向けられるまっすぐな視線の中にもある。
 絵本という体裁なので親が読み聞かせしようとすると時に冷や汗をかきながらになるかもしれない。次世代への強い希望と信頼が託された画期的な一冊である。
(すんみ訳、エトセトラブックス・2200円)
<ソ・ハンソル> 教員。小学校でのフェミニズムの教え方を研究する会の代表を務める。
<ユン・ウンジュ> 作家。
<イ・ヘジョン> イラストレーター、作家。いずれも韓国在住。

◆もう一冊

フクチマミ、村瀬幸浩著『おうち性教育はじめます』(KADOKAWA)

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