<食卓ものがたり>世界が認めた湧水栽培 ワサビ(静岡市)

2021年7月31日 07時18分

ワサビ田で収穫する出雲清教さん=静岡市で

 刺し身やそばの薬味として欠かせないワサビ。約四百年前、山の湧水を引き込み、日本で初めて栽培に成功したとされるのが、現在の静岡市葵区有東木(うとうぎ)だ。そこから車で三十分ほど南へ行った同区俵峰(たわらみね)の生産者を訪ねた。
 標高差約三十メートル。急傾斜の谷筋に積み上がったワサビ田三十枚を、冷たい水が流れ落ちる。湧き出た瞬間の水温は季節を問わず一三度ほどで一定だ。「水温が二五度を超えると成長が止まる。引き入れる水の量を調節するなど水温が上がらないよう注意している」と出雲清教(きよのり)さん(57)は話す。
 出雲さんのワサビ田は、日本一の生産量を誇る静岡県では一般的な「畳石式」と呼ばれる構造。表面は細かい砂利で、深くなるほど大きな石が組まれている。こうすることで、ろ過された清らかな水が地下を通って上の田から下の田へと流れていく。
 目詰まりを防ぐため、石は数十年に一度積み直す。ワサビは一年中収穫できるが、段差があって機械を入れられないため、苗の植え付けは手作業だ。食べられる状態になるまでには一年以上。シカやカモシカも警戒しなければならず、栽培には手間がかかる。
 運搬用の小型モノレールに乗せてもらい、収穫の様子を見た。ワサビは、高さ六十センチほどで根ごと引き抜く。薬味で使うのは茎の根元、根茎だが、長く伸びる茎もわさび漬けなどの原料として出荷する。
 二〇一八年、国連食糧農業機関は、県の伝統的なワサビ栽培を、世界農業遺産に認定した。認定の基準は生物多様性や土地・水管理の独自性が保たれていることなどだ。「うちにも審査のために人が来たよ」と出雲さんは誇らしげに笑う。世界に認められた農法で、鼻にツーンと抜けるおいしいワサビを作り続ける。
 文・写真 佐橋大

◆買う

 出雲さんが、わさび漬け用に茎などを出荷する田丸屋本店(静岡市葵区)は、明治時代から続く老舗。近年は、海藻を主成分とする皮膜で丸く包んだ「わさビーズ」や、静岡産にこだわったおろしわさび、洋食に合う「わさびイタリアーノ」、カツオのうま味と食物繊維を加えた「かつおのUMAMIわさび」など、さまざまな商品を開発、販売している=写真。
 商品はインターネット通販サイト「楽天市場」=田丸屋本店、楽天市場で検索=で買える。(問)同店=フリーダイヤル(0120)168111。

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