鉛筆キャップがタッチペンに 東京・下町の鉛筆メーカーが「二刀流」開発 コロナ禍のオンライン学習追い風に

2021年7月31日 12時00分

鉛筆にさしてタッチペンとして使える「スタイラスな鉛筆キャップ。」=9日、東京都葛飾区(池田まみ撮影)


 
 鉛筆工場の集まる東京・下町のメーカーが7年前に発売した鉛筆キャップが、新型コロナウイルス禍で脚光を浴びている。鉛筆の芯を覆うキャップとしての機能だけでなく、タブレット端末を操作するタッチペンにもなる「二刀流」が売り。コロナ禍でオンライン学習が広がり、小中学校でデジタル端末の整備が加速したことが追い風となった。(加藤健太)

◆鉛筆の特性に着目

 東京都葛飾区の町工場「北星鉛筆」が2014年に発売した「スタイラスな鉛筆キャップ。」。鉛筆の芯に使われる黒鉛には電気をよく通す性質があり、芯が触れるキャップの先端に導電処理をすることで、デジタル端末でタッチペンとして使えるようにした。
 1つ250円。昨年までの6年間で1万個を販売したが、コロナ禍で注目を集めるようになり、1年足らずで1万個が売れた。

◆デジタル端末の整備で脚光

 小中学校が一斉休校していた昨年4月、小中学生に1人1台のパソコンやデジタル端末を整備する「GIGA(ギガ)スクール構想」を掲げていた文部科学省は、目標達成の時期を23年度から20年度中へ前倒しを決定。全国の学校でデジタル端末の配備が加速した。
 葛飾区立よつぎ小学校は今年4月、児童1人1人にデジタル端末を配備。指で画面をなぞるよりも細かい操作ができるタッチペンの必要性を感じ、北星鉛筆のキャップを購入した。自ら品質を確かめた島野浩之校長は「どの角度で使っても感度が良かった」と話す。1本あたり、1500円前後するタッチペンよりも安価だった。
 北星鉛筆には奈良、新潟など他県の学校からも注文があった。杉谷龍一社長(44)は「小学生が安全に使えるように作った。まだ伸びる余地がある」と手応えを口にする。

「鉛筆の存在感を示したい」と話す北星鉛筆の杉谷龍一社長=9日、東京都葛飾区(池田まみ撮影)

 開発過程では、鉛筆のおしり側を導電処理することも考えたが、タッチペンとして使うときにとがった芯が児童生徒の顔に向いてしまうことから方向転換。芯を使い切ったら鉛筆は捨てられてしまうため、繰り返し使えるキャップにたどりついた。

◆「時代の主人公のそばに」

 ボールペンやシャープペンシルなど文具の多様化に加え、ワープロやパソコンの普及で文字を手書きする機会そのものが減った。昭和の高度経済成長期の最盛期に、年間約14億本を記録した業界全体の鉛筆生産量は、右肩下がりを続け、近年は2億本まで減った。
 だが、鉛筆作りは、今も重要な下町の地場産業だ。全国の鉛筆メーカーのほとんどは葛飾、荒川区などの東京23区の東部に集まっている。杉谷社長は、脅威であるはずのデジタル機器を敵対視せず、共存することでの生き残り戦略を描く。「鉛筆の価値を高め、時代の主人公のそばに居続けたい」と意気込んだ。
 問い合わせは、北星鉛筆=電03(3693)0777=へ。

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