五輪の熱狂どこ吹く風 外国人観光客が消えた浅草「売り上げ97%減」

2021年7月31日 17時21分
 新型コロナウイルスの影響で史上初の無観客となった東京五輪は、都内の観光地に影を落とす。100万人ともみられた海外からの観客受け入れが3月に見送られ、浅草では、その時点で五輪への期待はしぼんでいた。頼りの外国人観光客は「ほぼゼロ」となり、五輪開幕後も客足はまばら。連日の日本選手のメダルラッシュに沸く五輪の熱狂は、どこ吹く風だ。(加藤健太)

観光客がまばらな浅草・雷門前=7月29日

◆細くなった糸もう切れてしまう

 「ほそぼそとやっているけど、細くなった糸がもう切れてしまいそう」。浅草寺の仲見世で29日、土産物店の山村珠江さん(69)は現状の苦しさをそう表現した。模造刀を扱い、客のほとんどが外国人だった。「コロナ禍で売り上げは95%減…いや、97%減かな」と切実に打ち明けた。
 人目に付きやすい店頭の「1等地」には、人気アニメ「鬼滅の刃」のグッズやアマビエのキーホルダーが並ぶ。「日本人に受けるからね。商品の並べ方をがらっと変えた」。外国人観光客によく売れたぐい飲みセットは、店の中に引っ込めてあった。

◆人力車も思わず皮肉「遠くまでよく…」

 浅草や上野がある台東区を訪れた外国人観光客は、2018年の953万人から、20年は145万人に減った。20年の数値はコロナ急拡大前の1~3月の実績も含まれており、区観光課の平林正明課長は「昨年4月以降はほぼゼロに近い」と語る。

2019年6月、外国人観光客でにぎわう浅草・雷門前

 コロナ禍までは、東京観光に欠かせない雷門は外国人観光客でごった返し、まさに「人種のるつぼ」だった。それが今は客足もまばら。手持ちぶさたの人力車の車夫は「仲見世に人がいないから、遠くまで見渡せるでしょう」と皮肉まじりに語った。
 「あなたは今回の五輪をどう思いますか」。赤い大提灯の前で、フランス人ジャーナリストのルイ・ブランさん(27)が日本人にインタビューしていた。「開催前は反対の声が多かったが、アスリートの活躍で前向きな意見が増えてきている」という。

◆幻のマラソンコースは今

 暑さ対策で札幌開催に変更となったマラソンは、浅草もコースの一部になる予定だった。ランナーは15キロ地点の雷門前で折り返し、すぐ近くにそびえる東京スカイツリーを眺めて都心に戻る。日本らしい景観として世界に発信されるはずだった。

東京五輪のマラソンコースになっていた雷門前に立つアサガオのオブジェ

 コース予定地の脇にはいま、アサガオをモチーフとした大型オブジェが8基立っている。マラソン開催をにらんだ台東区が「日本らしさを演出する」と19年に整備した。区によると、整備と維持管理費としてこれまで7700万円を計上しているが、区公園課の村松有希課長は「もともと緑地の整備が目的だったので」と強調した。
 ランナーや観客の目に触れることはなくなっても、オブジェに巻き付くように育った青や紫の色鮮やかなアサガオが、力強く咲き誇っていた。苦境の浅草を励ますかのように。(加藤健太)

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